第21回認知神経リハビリテーション学会学術集会

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神経系(下肢/体幹)

[S3-13] 顕著な凹足変形を認めるCharcot-Marie-Tooth病患者の姿勢制御に対する介入

*赤口 諒1、橋本 宏二郎1、奥埜 博之1 (1. 医療法人孟仁会 摂南総合病院 リハビリテーション科)

【はじめに】
 Charcot-Marie-Tooth(CMT)病にみられる末梢神経障害は凹足変形や不安定な姿勢制御を伴う.今回,立位が困難なCMT患者に対して内部および外部観察,重心動揺計を用いた足圧中心(COP)から姿勢制御を分析することで,病態解釈と介入を試み,良好な結果を得たので報告する.

【症例】
 CMT診断から12年経過した70歳代男性.両足に凹足変形を認め,MMTは股関節屈曲(右5/左5),膝関節伸展(5/5),足関節底屈(2/2),背屈(1/1)であり,5点法を用いた感覚検査は足底の触覚(右4/左5),足関節の運動覚(0/2)であった.立位時は前足部の胼胝にNRS(右5/左3)の痛みを訴え,体幹前傾を呈し手放し立位が困難であった.重心動揺計(BASYS,テック技販社製)の結果は95%楕円信頼面積11.5㎠であった.「右足で踏ん張っている,後へふらつく」と訴えたが,COP位置は前方7.3㎝,左へ0.6㎝に示した.介助下で体幹前傾の修正を試みると,手放し立位が可能となり面積は6.1㎠に改善した。このとき「両足で支えている」と経験していたが,位置は前方7.8㎝,左へ3.6㎝に示した.

【病態解釈】
 姿勢制御の特徴から右足部に床との相互作用の問題があると考え,右足部に対して不安定板を用いた評価を試みた結果,足底圧から情報を構築し足関節底屈位を水平と誤認していた.これが原因で立位では足関節底屈トルクが生じ重心が後方移動するが,弱化した足関節背屈筋では制御できず,体幹前傾や上肢で代償していると考えた.

【介入と経過】
 足関節の運動覚から不安定板の角度を識別する認知課題を実施し,運動覚は(右4/左4)に改善した.体幹前傾は軽減し手放し立位が可能となった.痛みはNRS(右1/左0)に軽減した.COPは面積は2.8㎠,位置は前方9.1㎝,左へ0.6㎝を示した.後方へふらつく経験は消失した.

【考察】
 凹足変形により立位時の前足部の足底圧は大きくなるとされている(Crosbie 2007).本症例は凹足変形による前足部の足底圧の増大に加えて胼胝の痛みを伴っていたため,足関節の水平の認識および姿勢制御に影響を与えていたと考えた.今後は体幹・股関節機能も含めた介入についてのさらなる検討が必要である.

【倫理的配慮,説明と同意】
 発表に先立ち,症例に本報告に関して書面にて説明を行い同意を得ている.