第21回認知神経リハビリテーション学会学術集会

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神経系(その他)

[S4-02] 夫婦間における家事の在り方が共同行為へ変容した通所リハビリテーション事例

*加藤 慶紀1、壹岐 伸弥1、石垣 智也2 (1. 川口脳神経外科リハビリクリニック 、2. 名古屋学院大学 リハビリテーション学部 理学療法学科)

【はじめに】
 目的に対する共同行為の心的共有状態をWe-modeとした場合、これは対象者と療法士間に限定した事象ではない。今回、夫婦間における家事の共同行為の変遷から、療法士がもつべきWe-modeの視点について考察した。

【症例】
 対象は通所リハビリテーション(通所リハビリ)を利用していた夫婦である。夫は80歳代で、脳梗塞を発症し通所リハビリを利用された。妻は70歳代で、脳梗塞を発症し夫と同期間に通所リハビリを利用開始された。

【結果】
 夫の評価経過。通所リハビリ開始時Timed up and go test(TUG):9.9秒、Frenchay Activities Index(応用的日常生活動作:FAI):17/45点。中間(2ヶ月後)TUG:8.6秒、FAI:31/45点。最終(5ヶ月後)TUG:8.3秒、FAI:24/45点。妻の評価経過。開始時TUG:12.6秒、FAI:18/45点。最終(5ヶ月後)TUG:8.3秒、FAI:29/45点。夫は約5ヶ月間の経過で身体機能に著明な変化はみられなかったがFAIには変化を認めた。FAI31点と向上した中間時に妻は脳梗塞を発症し入院していた。この間、夫は初めて家事を行うことに対して「やることがたくさんあって大変だね」と記述された。妻の退院に伴い夫の家事量は再びFAI24点と低下したが、開始時と比較すると向上を認めた。最終時に夫は「やらなきゃいけないからね」と家事に対して義務的であるかのように記述した。妻は「結婚して55年経つけど初めて家事を手伝ってくれるようになりました。私たちは1人ずつでは半人前だから2人合わせてやっと1人前ですね。」と記述された。

【考察】
 夫婦における家事の在り方が、夫婦間での共同行為へ変容した。この背景には、妻の入院を契機に「夫婦での生活を保つ」という目的に対して、妻の負担(家事)に配慮するという夫の志向性が、夫婦間の良好な心的共有状態をもたらし生活行為の変容が生じたと考える。つまり、対象者の背景にある家族間のWe-modeもまたリハビリテーションの促進・阻害因子となる可能性がある。このため、生活を対象とする療法士には、We-modeの枠組みを拡張する視点を持つことが重要ではないかと考えられた。

【倫理的配慮(説明と同意)】
 本発表は本人および家族に口頭で説明し、同意を得ている。