Riabilitazione Neurocognitiva 2021

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一般演題

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高次脳機能障害

[S5-06] 認知運動課題により身体図式が再構築された失行症例

*松村 智宏1,2、沖田 かおる1、沖田 学1,2 (1. 愛宕病院 リハビリテーション部、2. 愛宕病院 脳神経センターニューロリハビリテーション部門)

【はじめに】
 失行症は運動予測と感覚フィードバックの統合の障害に起因している(近藤,2018).今回,失行症を呈した脳出血患者に対し運動予測と感覚フィードバックの統合を念頭に身体・運動部位の認識課題と同種・異種感覚統合の課題を実施した.結果,模倣障害や道具操作に改善を認めた経過を報告する.

【症例紹介】
 症例は左頭頂葉の出血により右片麻痺を呈し約2ヶ月が経過した70歳台の女性である.Br.stageは全てⅤであった.両側の肩・肘・手関節の身体・運動部位の認識が困難で,右側の身体に関しては「ない」と発言した.把持力の計測では毎回の力量にバラつきを認めた.全失語があり表出と理解は長文で困難であった.Apraxia Screen of TULIA(AST)は両上肢0/12点であった.病棟では車椅子の車輪に右上肢が接触しても気付かなかった.道具操作ではスプーンや櫛の拙劣さを認めた.

【病態解釈と認知課題】
 左側の頭頂葉損傷では体性感覚と視覚の異種感覚統合が困難となり身体図式が変質する(森岡,2013).症例は体性感覚鈍麻や身体の認識力の低下により,異種感覚統合が困難となり身体図式が変質している可能性がある.その為、身体図式に基づいた適切な運動予測と感覚フィードバックの生成と統合が困難となり,模倣障害や道具操作の拙劣さが生じていると解釈した.
 課題は他者と自己の肩・肘・手関節へのポインティングを実施した.次に他動運動の運動部位を認識した後に,他動運動から自動運動や模倣課題を実施した.最後にスプーンや櫛の操作練習を実施した.

【経過】
 介入5ヶ月後では,ポインティングは両側の肩・肘・手関節が可能となり,運動部位の認識は5割可能となった.把持力の計測では力量のバラつきが減少した.失語症は変化なし.ASTは左上肢で2/12点,右上肢で1/12点となった.病棟では車椅子の車輪に右上肢が接触すると気付く様になった.道具操作では運動学習の困難さを認めていたが,スプーンや櫛の拙劣さが改善した.

【考察】
 症例は感覚情報を参照に身体の認識が可能となる事で身体図式が再構築され,適切な運動予測と感覚フィードバックの生成と統合ができるようになったと推察される.この事により身体運動を認識して修正する能力が向上し,模倣障害や道具操作の拙劣さの改善に繋がったと考えられる。

【倫理的配慮(説明と同意)】
 発表に対して説明し同意を得た。