第21回認知神経リハビリテーション学会学術集会

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整形外科疾患

[S7-08] 異常知覚アロディニアを呈した症例に対する治療考察
ー 痛みの3側面からのアプローチ ー

*西村 清陽1 (1. 公益財団法人河野臨牀医学研究所附属品川リハビリテーション病院)

【はじめに】
 痛みは感覚的側面,情動的側面,認知的側面3つに分類される1).ギプス固定者4~5割程度がCRPSやアロディニアを発生することも報告されている2).この3つの側面を評価してどの側面が強いかをクリニカルリーズニングを行って治療する必要性があると考えられている.今回アロディニア患者の治療経過を報告する.

【症例】
 70歳代女性.自宅階段で転倒.中心性頸髄損傷,右橈骨遠位端骨折,肋骨骨折受傷,アロディニア.

【病態解釈】
 Zancolli分類(右/左)C7B/C8BⅡ.右肩関節屈曲70°右中指MP屈曲70°PIP屈曲50°,DIP屈曲40°,NRS10,CRP0.05,周径(右/左) MP関節19.5cm/18cm. FIM運動項目56点.感覚障害とギブス固定期間による学習性不使用と疼痛経験によって症例は接触に対する情報が疼痛に変質した事で異常知覚に至ったと考える.また,「こんな手ではだれの役にもたたない」の言語記述より,社会への嫌悪感も表出している事が伺える.

【治療アプローチ及び経過】
 圧識別課題と素材識別課題実施.正常部位での知覚細分化後に異常知覚部位で正常知覚イメージ想起を実施する.この予測制御によって疼痛が抑制された後,趣味であるクラシックを聴かせる等で痛みはさらに減弱する.その後他患者の手伝いなども行うなど社会的な役割を持つことで痛みは消失した.Zancolli分類は両側C8BⅡ.右肩関節屈曲130°,右中指MP屈曲90°,PIP屈曲80°,DIP屈曲50°, NRS1,周径(右/左)MP関節18.2cm/17.9cmと左右差改善.FIM運動項目81点,.

【考察】
 感情的側面や認知的側面による疼痛防御行動や学習性不使用に対しては圧識別や素材識別課題によって細分化を図ることで疼痛の軽減は得たが消失には至らなかった.しかし,本人が精神的に落ち着く環境の提供や他患者とのかかわりなど本人にとって社会的な意義が見いだせたことで感覚的側面に改善が得られた事で疼痛の消失した.以上のことから慢性疼痛に対する治療は各側面に適した方略が必要であることが考察される.

【倫理的配慮(説明と同意)】
 ヘルシンキ宣言に則って守秘義務,情報管理を行い,データを研究で使用する旨の説明を行い書面上にて了承を得た.