第22回認知神経リハビリテーション学会学術集会

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[S1] 基礎系

[S1-02] 認知機能が低下した後期高齢者に対する足底知覚課題の効果~前足部に対する左右同時比較課題の正答率とFRTとの関係性~

*林 節也1、菅沼  惇一2、田口 周司1、岩崎 拓也3、千鳥 司浩2 (1. 医療法人社団 友愛会 介護老人保健施設 山県グリーンポート、2. 中部学院大学 看護リハビリテーション学部 理学療法学科、3. 大垣徳洲会病院 リハビリテーション科)

【はじめに】我々は認知機能が低下した後期高齢者に対して,3日間前足部でスポンジの硬度の左右同時比較課題を実施し,介入後にFRTの距離が延長することを報告した(林,2021).しかしながら,課題の正答率との関連は明らかにできておらず,介入の効果の大きさは不明である.本研究の目的は, 左右同時比較課題の効果の検証および課題の正答率とFRTの関係性について明らかにすることとした.【対象】対象は介護老人保健施設に入所中である11名(男性3名,女性8名)とした.対象者の平均年齢は87.5±10.7歳, MMSEは平均20.9±5.9点であった.除外基準は,主疾患に神経学的疾患を有する者,足底に感覚障害を有する者,立位が困難な者とした.【方法と介入】介入課題は,座位にて左右の前足部でスポンジの硬度の左右同時比較課題を7日間実施した.課題の難易度は,難易度低(硬度1と硬度5),中(2と4),高(3と4)とし,難易度低から順に各5回計15回を実施しその正答率を計測した.課題の正答,誤答においては,即時的にFBを行った.介入中は閉眼が困難であったため,前方を注視する様に指示した.介入前後には立位バランスの評価としてFRTを計測した.統計解析には,介入前後のFRTの比較には対応のあるt検定を用い,介入効果の大きさを検証するために効果量(r)を算出した.さらに,課題正答数の変化量(初日と7日目)の比較にはマンウィットニーのU検定を実施した.さらにFRTの変化量と課題正答数の変化量との関係をスピアマンの順位相関係数によって分析した.統計学的水準は5%とした.【結果】FRTおよび課題正答数は,介入前後で有意差を認め(p<0.01),介入後に増大した(効果量大).FRTの変化量と課題正答数の変化量におけるスピアマンの順位相関係数は0.69であり,有意な正の相関を認めた(p<0.05).【考察】今回,認知機能が低下した後期高齢者において,課題の正答率の上昇に伴いFRTの距離が延長することが明らかになった.課題における注意を前足部に限局したことで認知的負荷が少なく容易に実施可能であったことが考えられる.また, 左右同時比較課題を通じて前足部の触圧覚情報が向上したことで,前方への重心移動が可能となりFRTの改善に至ったと考える.【倫理的配慮】本発表は対象者より同意を得ている.