Riabilitazione Neurocognitiva 2023

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クリニカル・ディスカッション

クリニカル・ディスカッション

[CD] クリニカルディスカッション③

Sun. Oct 8, 2023 11:10 AM - 12:10 PM 第3会場 (B1F ギャラリー1)

座長:稲川 良(水戸メディカルカレッジ)

11:40 AM - 12:10 PM

[CD-06] 社会に溶け込む振る舞いの再学習に向けて- 内省する自己の構築を探求した臨床推論から考える -

*林田 佳子1 (1. 摂南総合病院)

コミュニケーションは,社会の中に溶け込む「わたし」を形成し(Frith, 2012),他者に働きかける.これにはメタ認知・メタ学習のような自己や他者の意図を思考し内省する過程が含まれる(Langdon, 2021).
 失語症者とのコミュニケーションを振り返ると,他者が感じる違和感に気づかずに,社会的文脈から逸脱した振る舞いによって行為を成立させようと試みる患者を多く経験する.失語症のリハビリテーションでは,他者と社会を形成するために,場に適した振る舞いの選択を再学習することが求められる.この再学習には,他者の意図を思考し内省する自己の構築が必要と考える.
 本発表では失語症例に対し,内省する過程から自己の再構築を試みたセラピストの臨床推論を提示する.症例は左前頭-側頭葉の脳梗塞により重度右片麻痺を認めた70歳代,右利きの女性である.重度運動性失語,重複する高次脳機能障害を呈し,他者からの働きかけに対してキョトンとした反応をとることが多く,微笑むことで応答するのみであった.コミュニケーションでの適切な表情やアイコンタクト,相槌といった応答は不自然さを認め,場に馴染んだ適切な振る舞いに至らなかった.そこで,期待される他者の振る舞いと実際の場の他者の振る舞いの差異を自覚し,社会的文脈から逸脱することのない振る舞いを選択できるよう評価と介入を行った.結果,場に適切に馴染み,社会を形成できたことで,「わたし」が展望する意図の実現に向けてコミュニケーションが可能となった.
 客観的に自己を眺め他者や状況と比較することで気づきが生まれる.セラピストと共同行為の中で試行錯誤し,行為を修正して学習することで経験が更新され,「自律したわたし」を創発することになるのではないだろうか.本学術集会では,他者との相互作用を通した経験を蓄積することで振る舞いを更新できるのではないか,という視点で行為のメタラーニングについて議論する機会としたい.