日本臨床神経生理学会学術大会 第50回記念大会

講演情報

関連学会合同シンポジウム

関連学会合同シンポジウム2 神経生理学的アプローチによる心理学研究 (日本生理心理学会)

2020年11月26日(木) 08:10 〜 09:40 第8会場 (2F K)

座長:勝二 博亮(茨城大学教育学部)、軍司 敦子(横浜国立大学教育学部)

[CSP2-3] 触覚性注意の手内分布における柔軟性:脳磁図研究

木田哲夫1,2 (1.愛知県医療療育総合センター発達障害研究所障害システム研究部門高次脳機能研究室, 2.生理学研究所 生体機能情報解析室)

視覚系と聴覚系において空間注意の勾配の機序が報告されてきたが、触覚では不明である。本研究では、脳磁場計測により触覚性注意効果の手内分布を検証した。リング電極を用い、750-1250 msのランダムな刺激間間隔で右手の5本の指(D1~D5)にランダム順で電気刺激を提示した。被験者は、注意を向けた指(注意指)に稀に提示される2連発刺激を標的刺激として声に出さずに数えるよう求められた。注意条件は人差し指(D2)注意、薬指(D4)注意、人差し指薬指(D2D4)同時注意、安静の4条件とした。脳磁場は全頭型306ch脳磁計を用いて計測した。刺激対側半球の一次体性感覚野(SIc)と二次体性感覚野(SIIc)の脳磁場反応(50-70 ms、80-100 ms)は注意指刺激で増大した。D1およびD5刺激に対するSIIc反応は隣接指に注意が向けられた時に増大した。D2およびD4刺激に対するSIIc反応はD2D4同時注意条件において一指注意時・非注意時の中間の値を示した。D2D4同時注意条件では、D3刺激に対するSIIc反応は低下した。側頭頭頂接合部(TPJ)および前頭前野(PFC)の反応は非注意刺激で低下した。これらの結果は、触覚性注意には空間的勾配があり、注意が単一指と非隣接二指のいずれに向けられるかによって柔軟に調節されることを示唆する。