日本臨床神経生理学会学術大会 第50回記念大会

講演情報

関連学会合同シンポジウム

関連学会合同シンポジウム22 てんかん外科と神経生理学の融合 (日本てんかん外科学会)

2020年11月28日(土) 10:20 〜 11:50 第7会場 (2F J)

座長:貴島 晴彦(大阪大学大学院 医学系研究科 脳神経外科学)、三國 信啓(札幌医科大学脳神経外科)

[CSP22-4] 新たな体内埋込み型治療装置(DBS、RNS)への期待

前原健寿1, 稲次基希1, 川合謙介2, 山本貴道3, Werner Doyle4 (1.東京医科歯科大学 脳神経外科, 2.自治医科大学 脳神経外科, 3.聖隷浜松病院 脳神経外科, 4.ニューヨーク大学 脳神経外科)

てんかんに対する電気刺激療法は、難治てんかんに対する新たな治療法として脚光を浴びている。本邦では2010年に迷走神経刺激療法が導入され、難治てんかん患者に対する有効な治療法としての位置を確立している。一方、米国ではDBS(deep brain stimulation)やRNS(responsive neurostimulation)がFDAの認可を受け、難治てんかんに対する治療が可能となっている。本シンポジウムではDBS、RNSの現況を紹介したい。 DBSはパーキンソン病等の治療法としてすでに本邦でも広く行われている。FDAでは、2018年4月に視床前核に対するDBSがてんかんの治療法としての認可を受けている。2010年にRCTであるSANTE studyが報告されたが、その後非盲検下で全例刺激を開始したFisherらの報告では、111例の症例に対する長期成績で発作は継続的かつ漸進的改善を認め、5年後の発作減少率は69%で、68%の患者で発作が50%以上減少し、発作重症度と生活の質の有意な改善した。一方でSANTE studyにおける記銘力障害やうつ症状などの合併症に関する長期成績は、うつ病の合併が15%、記銘力障害が13%と刺激群で有意に多いとされていたが、その後の非盲検下での7年間の刺激で認知機能障害やうつ病スコアの有意な悪化はなかったとの報告があり今後の検討が待たれるところである。視床前核以外にも海馬、視床下核、視床正中中心核などでRCTが組まれ、一定の有用性が報告されている。 RNSは脳波によって発作を感知し、脳の直接刺激を行って発作を抑制する最初のデバイスで2013年11月にFDAの認可を受けた。すでに6年以上の実績があり、2000例近くの症例が蓄積されている。最初の多施設二重盲検無作為化比較試験は、191 例を対象にして、治療群で37.9%,非治療群で17.3% と治療群で有意に発作頻度減少がみられた(p=0.012)。治療開始後1 年での発作頻度減少の中央値は44%,2 年で53%であった。また内側側頭葉てんかん111例を平均6.1±2.2年追跡期間し、発作減少率は中央値で70%。29%が6ヶ月以上、15%が1年以上の無発作期間を経験した。新皮質てんかん患者126人においても、平均6.1年追跡で、発作減少率の中央値は、前頭葉および頭頂葉てんかんで70%、側頭葉てんかんで58%、multilobar onsetで51%であった。26%の患者が6ヶ月以上、14%が1年以上の無発作期間を経験した。RNSは、皮質脳波が永続的に記録可能であるため、正確な発作の解析や脳機能の解析に重要な役割を果たすことも期待されている。現在「早期導入を要望する医療機器」として、日本てんかん学会(協力学会として日本脳神経外科学会と日本てんかん外科学会)からRNSの本邦への導入を要望中である。