50th Memorial Annual Meeting of Japanese Society of Clinical Neurophysiology (JSCN)

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50回大会記念シンポジウム

50回大会記念シンポジウム iPS細胞の臨床応用-現状と未来-

Fri. Nov 27, 2020 4:00 PM - 6:00 PM 第1会場 (2F A)

座長:人見 浩史(関西医科大学iPS・幹細胞再生医学講座)、木村 淳(アイオワ大学 神経科 臨床神経生理部門)

[50回大会記念シンポジウム-4] iPS細胞由来心筋細胞シートの開発

澤芳樹 (大阪大学大学院 医学系研究科 外科学講座 心臓血管外科)

重症心不全に対して、心筋再生委治療が、弱った心筋の機能を回復することができる新しい治療として期待されている。近年、iPS細胞が誘導され、同細胞より心筋細胞に生理的、解剖学的に相同性の高い、心筋細胞を誘導することが可能となっている。我々は同心筋細胞を用いて、心筋細胞シートを作成し、大動物心不全モデルを用いた同組織のProof of Conceptも示してきた。iPS細胞由来心筋細胞シートは、レシピエント心と同期して挙動しており、同組織の拍動がレシピエント心に対して直接作用する可能性がある一方、同組織から肝細胞増殖因子をはじめとしたサイトカインが分泌され、移植した臓器に血管新生を起こさせ、血流の改善がおこることも示してきた。また、iPS細胞に発現しているN-glycan等の補体の発現パターンは、心筋細胞への分化過程において、成熟心筋細胞と類似した発現パターンになってきていることが示されており、iPS細胞由来心筋細胞の免疫原性を検証する上で重要であるものと思われる。また、HLAホモiPS細胞由来心筋細胞は、カニクイサルの同種移植実験において、免疫原性を抑制することが知られており、臨床応用の際にはCiRAが構築しているHLAホモiPS細胞をHLAマッチングした患者に移植することが免疫学的に有効であることが予想される。in vivoでの生着効率の向上には、iPS細胞の免疫原性の抑制、移植組織に対する栄養血管の構築が必要であり、これらの解決策として、我々は、iPS由来心筋細胞に間葉系幹細胞を混入させた細胞シートを作成し、組織を維持しうる栄養血管の構築や免疫寛容効果が期待されることを証明した。さらに、豊富な血管網を有する大網とiPS細胞由来心筋細胞シートを同時移植することにより、心筋細胞の生着が維持されることも示してきた。これらの研究開発の背景のもとに、本細胞の心不全への臨床応用への準備として安全性の検討、細胞の大量培養法の開発を進めてきた。大量培養法に関しては、すでに基本技術は開発されており、臨床応用化に成功した。また同時に同細胞の安全性の検証として、いわゆる規制科学として未分化細胞のマーカー、およびNOGマウスを用いた造腫瘍性に関わる安全性の検証システムが確立した。また、造腫瘍性に関する安全性だけではなく、分化誘導後に癌化を促す遺伝子異常が発生していないか検証するシステムも構築されており、iPS細胞臨床株における大量培養、高効率分化誘導とともに造腫瘍性、遺伝子における安全性が検証しえたいま、医師主導治療が開始された。まさに、心不全患者への臨床応用が始まろうとしている。