日本臨床神経生理学会学術大会 第50回記念大会

講演情報

特別シンポジウム

特別シンポジウム 脊髄損傷における最近の進歩

2020年11月26日(木) 13:00 〜 14:30 第2会場 (2F B-1)

座長:松山 幸弘(浜松医科大学整形外科)、齋藤 貴徳(関西医科大学整形外科学講座)

[特別シンポジウム-3] われわれが目指す脊髄損傷に対する再生医療とは

中村雅也 (慶應義塾大学医学部整形外科)

脊髄損傷後の経時的な病態の変化に基づき、その治療戦略は異なる。本シンポジウムでは、これまでわれわれが取り組んできた1)亜急性期脊髄損傷に対するNeurogenic iPS細胞由来神経前駆細胞(iPS-NPC)移植と、2)慢性期脊髄損傷に対するGliogenic iPS-NPC移植の現状と今後の展望について紹介したい。
1)亜急性期完全脊髄損傷に対するNeurogenic iPS-NPC移植:安全性を確認したNeurogenic iPS-NPCを免疫不全マウスおよびサル損傷脊髄に移植し、運動機能回復が促進することをこれまで報告してきた。その結果に基づき、平成32年2月に厚生科学審議会で承認された。臨床用細胞の製造、品質評価は既に終了しているが、新型コロナ感染の拡大を受けて、現在(2020年9月)臨床研究の開始を見合わせている状況である。状況を見極めて年内には亜急性期(受傷後2から4週間)完全脊髄損傷(ASIA-A)に対する臨床研究を開始したい。
2)慢性期不全脊髄損傷に対するGliogenic iPS-NPC移植:慢性期不全脊髄損傷では脱髄された残存する軸索を治療ターゲットとして、オリゴデンドロサイトへの高い分化能を有するGliogenic iPC-NPCの誘導法を確立し、前臨床研究を行ってきた。その結果、従来のNeurogenic iPS-NPC移植単独では機能改善が厳しかった慢性期脊髄損傷において、Gliogenic iPS-NPC単独でも機能改善が得られることを明らかにした。この結果を受けて、AMED再生医療実用化研究事業に採択され、2023年の慢性期脊髄不全損傷に対する医師主導治験を計画している。その準備状況とさらに慢性期完全脊髄損傷に向けた我々の取り組みに言及したい。