日本臨床神経生理学会学術大会 第50回記念大会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム12 レム睡眠行動障害研究の進歩

2020年11月26日(木) 16:30 〜 18:00 第8会場 (2F K)

座長:宮本 智之(獨協医科大学埼玉医療センター脳神経内科)、野村 哲志(のむらニューロスリープクリニック)

[SP12-2] レム睡眠行動障害の自律神経障害

角幸頼1, 松尾雅博1, 尾関祐二1, 仲山千佳夫2, 藤原幸一3, 角谷寛4 (1.滋賀医科大学 精神医学講座, 2.京都大学大学院 情報学研究科, 3.名古屋大学大学院 工学研究科, 4.滋賀医科大学 睡眠行動医学講座)

 レム睡眠行動障害(rapid eye movement sleep behavior disorder: RBD)は睡眠随伴症の1つであり、レム睡眠時の筋緊張消失(atonia)が損なわれ、夢に関連した行動がみられることを特徴とする。またRBDは、パーキンソン病やレビー小体型認知症などα-シヌクレインと関連した神経変性疾患に高率に合併するほか、特発性RBD患者の多くが長期罹患により神経変性疾患に進展することが知られている。2019年の系統的レビューによると、RBDの神経変性疾患発症リスクは、5年で34%、10.5年で82%とされる(Galbiati, 2019)。高齢者におけるRBDの有病率は約2%と報告され、神経変性疾患との関連性の観点からも、今後神経症状の出現や重症化への対応が必要となる。
 神経変性疾患を発症していないRBDにおいても、わずかな運動障害や軽度認知障害、抑うつ症状など多彩な症状を認める。なかでも自律神経障害は高率に合併し、患者のQOLを損ない得る。
 自律神経障害の症状は、便秘や排尿障害、起立性低血圧、体温調節障害など多岐にわたり、問診や質問紙などで症状を評価するのが一般的である。起立性低血圧は失神や転倒を引き起こし、骨折などの受傷を来たしうる。一方で自覚症状を伴わない場合があり、起立試験など適切な手法で検査を行わなければ、見過ごされる危険性がある。
 心電図のRR間隔(R-R interval: RRI)は生理的な揺らぎ(心拍変動, heart rate variability: HRV)を呈する。HRV解析により得られた指標は、自律神経障害を反映すると報告されている。我々は、HRV解析による起立性低血圧の評価・検出可能性に着目した。神経変性疾患を発症していないRBD患者および健常高齢者を対象に起立試験を行い、起立前の臥位の状態でのHRV指標と、起立性低血圧の発生との関連を調べた。その結果、HRV解析指標の一部が起立性低血圧と関連することがわかった。今後、HRV解析の応用により、起立性低血圧を事前に検出するシステムの構築や、自律神経障害の重症度評価が可能になるかもしれない。
 今回、RBDの神経症状について概説し、特に起立性低血圧の病態やその検出法について紹介する。本発表は、滋賀医科大学倫理委員会で承認されている。