日本臨床神経生理学会学術大会 第50回記念大会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム13 てんかん外科における脳機能モニタリング

2020年11月27日(金) 08:20 〜 09:50 第5会場 (1F C-2)

座長:三國 信啓(札幌医科大学 脳神経外科)、松本 理器(神戸大学脳神経内科)

[SP13-3] てんかん外科における術中の脳機能マッピング

菊池隆幸1, 山尾幸広1, 中江卓郎1, 光野優人1, 稲田拓1, 下竹昭寛2, 吉田和道1, 松本理器3, 國枝武治4, 池田昭夫5, 宮本享1 (1.京都大学 医学部附属病院 脳神経外科, 2.京都大学大学院医学研究科 臨床神経学, 3.神戸大学大学院医学研究科 脳神経内科学分野, 4.愛媛大学大学院医学系研究科 脳神経外科, 5.京都大学大学院医学研究科 てんかん・運動異常生理学講座)

 薬剤抵抗性焦点性てんかんの外科的治療において、てんかん原性領域を推定する努力に加えて、てんかん原性領域の周辺に存在する機能領域の同定・温存は必須項目である。機能領域とてんかん原性領域と推定される領域にオーバーラップがみられる場合には、機能領域と判断された中でどこが切除可能でどこが切除不可能かを見極める必要も出てくる。皮質脳機能マッピングのゴールド・スタンダードは硬膜下電極の慢性留置による高頻度電気刺激だが、術中に上記の様な判断が必要とされる状況もある。本発表では、患者側面、時間的側面で厳しい制約が課される術中という環境で、てんかん外科においてどの様な脳機能マッピングが有用かについて自験例を紹介しつつ検討を行う。また、てんかん原性検索としてのマッピング、将来的な展望にも言及する。
 術中マッピングが求められる状況として、硬膜下電極を慢性留置することができない領域にてんかん原性領域と機能領域のオーバーラップが想定される場合、慢性留置を行わない一期的な切除術を選択した場合、機能的に重要な線維連絡を担う白質領域切除が求められる場合、などが考えられる。術中に硬膜下電極を留置することが可能な場合には、覚醒下での高頻度電気刺激による皮質機能マッピングが第一選択となろう。白質領域の切除が必要になる状況はてんかん外科では非常に稀と思われるが、この場合は白質電気刺激によるマッピングや白質-皮質間誘発電位記録などが候補となり、モニタリングには皮質-皮質間誘発電位記録が有用である。
 手法の特徴と限界として、術中覚醒下での高頻度電気刺激は慢性電極留置に近いという点で信頼性が高いと考えられ、また腫瘍手術で多くの実績があるが、患者に負担と協力を求める点、てんかん発作誘発リスクを有するのが欠点である。誘発電位記録は患者負担が少なく、またリスクも少ないことが利点だが、評価する脳機能によっては時間を要するという懸念があり、状況に応じた手法の選択と組み合わせが求められる。
 将来展望としては、SEEGの国内本格導入も近く、慢性硬膜下電極留置の占める割合は次第に低下すると考えられる。機能マッピングにおけるSEEGの注意点はよく知られており、それをカバーする方法として術中マッピングの重要性は高まることが見込まれる。てんかん原性のマッピングも広義ではマッピングと見做せる。術中脳波記録、広周波数帯域皮質脳波記録は、簡便で信頼性の高い術中マッピング法となる可能性がある。