日本臨床神経生理学会学術大会 第50回記念大会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム9 てんかん発作時脳波を極める

2020年11月26日(木) 16:30 〜 18:00 第3会場 (2F B-2)

座長:中里 信和(東北大学てんかん学分野)、重藤 寛史(九州大学大学院医学研究院 保健学部門 検査技術科学分野)

[SP9-3] 頭蓋内記録における発作時脳波

臼井直敬 (NHO静岡てんかん・神経医療センター)

てんかんの外科治療において、頭蓋内脳波は大きな役割を果たしている。その意義は、頭皮脳波によるビデオ脳波モニタリングを含む非侵襲的検索から想定されるてんかん原性域についての仮説を実証することである。よって、仮説を立証できるよう適切に頭蓋内電極が配備されていることが必須となる。低周波で繰り返す棘波は内側側頭葉からの発作起始パターンとされる。新皮質てんかんの発作時頭蓋内脳波での発作起始パターンとしては低振幅速波が最も典型的である。δ、θ帯域の徐波ではじまる場合、発作起始域ではなく発作発射の伝播をみていると考えられる。発作発射はしばしば急速に広がり、発作起始域の同定が困難なことも多い。また,大脳皮質の中で脳表に現れている部分は約1/3程度かそれ以下である。深部電極(脳内電極)を用いることで脳表に現れていない領域からの記録が可能となるが、留置できる部位は限られる。頭蓋内電極が留置されていない領域から発作が起始している可能性を常に念頭において脳波を解釈する必要がある。発作起始域と判定するには,脳波変化が臨床発作症状と同時かそれより先行して起こっていることが必要条件である。電極が留置された部位が真の発作起始域に相当するのか、発作発射が早期に伝播した領域なのか,を確実に判定しうるものはない。頭蓋内脳波は、てんかん外科治療におけるゴールドスタンダードとされてきたが、その所見のみに依拠して手術適応や切除範囲を決定するのは危険である。頭蓋内脳波は他の検索手法よりも上位にあるものではなく、他の手法と合わせて解釈されるべきものである。ここでは、発作時頭蓋内脳波の実例を示し、脳波の解釈、および最終的にどのように切除範囲を決定するかの思考過程を呈示する。てんかん外科治療において頭蓋内脳波を有用なものとするには適切な電極配備がすべてといっても過言ではない。非侵襲的検索を十分に行うことの重要性をあらためて強調したい。