[WS5-4] 意識障害の脳波判読の実際
令和元年の2019年は、Hans Berger博士が脳波を発見して90年の節目であった。90年を経ても、意識障害・てんかんなど脳機能や大脳皮質の興奮性と直接に関わる病態・疾患の診断には中核的な検査法と位置づけられる。てんかんは、慢性の脳の病気で、大脳の神経細胞が過剰に興奮するために、脳の症状であるてんかん発作が反復性におこるもの、と定義される。現在においても、狭義のてんかん原性を診断できるのは脳波である。意識障害患者では、CTやMRIといった解剖画像や血液検査による病因の検索がかかせない。一方、大脳の機能評価に関しては、脳波検査は、大脳皮質の神経活動(シナプス後電位)をミリ秒単位で動的に計測でき、長時間、そして繰り返し患者のベッドサイドで検査ができる長所を持ち、意識障害の診断・評価にはかかせない検査法である。コンピュータをはじめとしたデジタル機器の進歩により、従前のアナログ脳波計での紙書き脳波の「アナログな」判読から、デジタル脳波計の記録をパソコン上でフィルタやモンタージュを自在に変えて「デジタルに」判読できる時代となった。デジタル機器の発達で、比較的容易に長時間のビデオ脳波モニタリングや持続脳波記録が可能となり、てんかんの診断・術前評価や神経救急の現場での意識障害のモニタリングにも応用されている。本講演では、大会形式上可能であれば、実際の意識障害の脳波(代謝性脳症や非けいれん性重積状態)を例にとって、意識障害の「デジタル脳波判読」の実際を紹介したい。