第97回日本産業衛生学会

セッション情報

シンポジウム

シンポジウム 20 デューデリジェンス視点からの運輸業における過労死等防止の実践~知見を生かした中小事業場産業保健サービスの新しい試み~

2024年5月25日(土) 13:40 〜 15:40 第2会場 (広島国際会議場 B1F ヒマワリ)

座長: 高橋 正也(労働安全衛生総合研究所過労死等防止調査研究センター), 中辻 めぐみ(社会保険労務士法人中村・中辻事務所)

 労働安全衛生総合研究所・過労死等防止調査研究センターでは,過労死等防止対策推進法の下,平成26年度より過労死等の実態解明と防止対策の提案に取り組んでいます[1]。令和3年度からは,各業種の実情に即した有効な対策を議論し,その実装を目指す「対策実装研究」を始めました[2]。現在は運輸業と建設業について,事業者・業界団体・実務者・研究者によるステークホルダー会議を基盤に活動しています。| 運輸業は過労死等(脳・心臓疾患,精神障害)の労災認定件数が業種別で上位を占めています。令和6年度からは時間外労働の上限規制が始まり,改正された改善基準告示も適用されます。こうした状況を踏まえ,本シンポジウムでは次の4名の専門家をお招きして,運輸業の働き方や健康確保などを査定・措置・追跡・情報開示(デューデリジェンス)いたします。|(1)大原記念労働科学研究所の酒井一博氏には「運輸業における過労死等の実情」と題して,トラックドライバーの健康安全の向上に長年携わってきたご経験から,運輸業界や運送事業者に係る課題を詳らかにして,効果的な対策のあり方をご議論いただきます。さらに,上記研究班のチーフとして,得られた研究成果や良好実践例を報告していただきます。|(2)全日本トラック協会の大西政弘氏には「トラック運送業界の過労死等防止対策の取組」と題して,トラック運送の業界団体として過労死等防止計画をどのように策定・実行し,成果を産み出してきたかをご紹介いただきます。トラック運送は生活と経済を支える社会的価値の高い仕事ですから,その魅力を高め,誇りを保てる業界になるために必要な方策も提案していただきます。|(3)株式会社ハンナは奈良県の運送事業場(設立昭和55年,従業員約150名,車輌数約110台)であり,厳しい運送業界を刷新すべく,様々な努力を行っています。代表取締役の下村由加里氏には「中小企業の事業運営の要は人的資本にあり!」と題して,経営理念,日頃の実践,そして事業者としての役割と責任をお示しいただきます。さらに,自らの事業場だけでなく,業界全体が成長するための秘訣も解説していただきます。|(4)なかにしヘルスケアオフィスの中西麻由子氏(産業医,事業構想修士)には「研究成果と現場をつなぐ~過労死等防止対策実装研究班での中小事業場向け人権デューデリジェンス支援対策への挑戦~」と題して,“ビジネスと人権”を含めたより広い枠組から,運輸業における産業保健サービスのあり方をご報告いただきます。加えて,対策実装研究班の共同研究者として,中小事業場が大半の運輸業の現場で使いやすい過労死等防止ツールの一端もお示しいただきます。|以上の個別発表に続く総合討論では,私たちのなすべきこと(変わるべきこと)を参加者の皆さまと一緒に検討いたします。| 1. https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_04768.html| 2. https://records.johas.go.jp|