第97回日本産業衛生学会

セッション情報

シンポジウム

シンポジウム 12 DX時代の労働安全衛生のあり方を考える ~遠隔産業衛生が導く未来~

2024年5月24日(金) 13:40 〜 15:40 第4会場 (広島国際会議場 B2F ダリア2)

座長: 梶木 繁之(株式会社産業保健コンサルティングアルク), 齊藤 宏之(独立行政法人労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所)

近年、産業衛生活動の場となる企業等の事業場や各種労働現場は、技術革新やグローバル化によって大きく変化し、そこで働く人の健康課題も大きく影響を受けつつある。具体的には、人工知能(AI)の導入やモノのインターネット(IoT)への連結などの技術革新によって、労働の質や内容は大きく変化しておりまた、少子高齢化やグローバル化、就業構造の変化等の影響で、産業衛生活動の対象となる働く人の健康状態の格差や価値観の多様化が進展してきている。 このような社会背景・産業構造の変化に応えるべく、2029年に創立100周年を迎える本学会は、「100 周年を見据えたミッションと重点項目」を掲げ取り組みを推進している。  その中には、学術活動として「科学技術の進歩や技術革新を見据え、産業衛生に対するニーズの変化を踏まえた学術活動の推進」が、実践活動として「学術活動の成果を活用したエビデンスに基づく実践活動の推進」、「多様化する働く人の背景と企業の価値観やニーズに対応する質の高い実践活動の推進」、「革新的な各種技術の実践活動への応用」が掲げられている。 さらに、このような状況下において一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)からは2023年5月16日付けで、「DX時代の労働安全衛生のあり方に関する提言(以下:提言)」が出された。これは、我が国の労働環境や社会構造、産業構造の変化、世の中のDX(デジタルトランスフォーメーション)* 推進への動きを受け、労働安全衛生分野における現状分析と課題、課題解決に向けた政府への要望をまとめたものである。参照:https://www.keidanren.or.jp/policy/2023/035.html 提言は、【課題1】デジタル技術とデータのさらなる活用、【課題2】働き手の健康確保対策の強化、【課題3】事業場を跨る安全衛生活動の実施、【課題4】労働者以外の者の安全衛生の確保と、多岐に亘っている。このうち、【課題1】に含まれる「巡視規制の見直し」、「点検・検査等の頻度・方法の見直し」、【課題2】に含まれる「ストレスチェックの実施手法の多様化」に関しては、遠隔産業衛生技術に関連するものとして、対応を検討する必要があると思われる。この提言を受け経団連とも相談の上、今回の学会のシンポジウムテーマの1つとして取り上げさせていただいた。本シンポジウムでは、遠隔産業衛生技術に関連する提言のうち、遠隔機器を用いた産業医活動について櫻木園子先生から、遠隔職場巡視の実際と課題について黒崎靖嘉先生から、ICT技術を用いた作業環境モニタリングについて津田洋子先生から、メンタルヘルス分野への応用について石澤哲郎先生からそれぞれ発表いただく。本企画が、労働安全衛生分野における今後のDX化の検討に資する議論の契機となれば幸いである。