第39回一般社団法人日本口腔腫瘍学会総会・学術大会

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10.悪性腫瘍・バイオマーカー

[P10-02] ヒト舌癌オルガノイドバイオバンクの構築

〇佐瀬 美和子1,2、佐藤 卓1、野口 忠秀2、森 良之2、樗木 俊聡1 (1.東京医科歯科大学 難治疾患研究所 生体防御学分野、2.自治医科大学 医学部 歯科口腔外科学講座)


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舌癌は、早期ステージでも潜在的リンパ節転移が存在するが、その診断は難しい。再発例は治療抵抗性を示すため、初回治療時の診断・治療が重要である。しかし、予後予測や治療抵抗性の評価に有用なバイオマーカーは存在しない。従来、前臨床ヒト癌モデルとして用いられてきた癌細胞株では、患者ごとの癌の特徴(多様性、組織構造、遺伝子変異)を再現することは難しく、樹立効率も低い。他方、患者ごとの癌の特徴をin vitroで忠実に再現する新たなモデルとして、ヒト癌オルガノイドの有用性が示唆されている。そこで本研究では、患者ごとの舌癌の性状や薬剤感受性、放射線感受性を解析可能な新規モデルの確立を目的とし、各患者のヒト舌癌オルガノイドを樹立し、それらを集約した“舌癌オルガノイドバイオバンク”を構築した。

これまでに、細胞採取法、オルガノイド培養条件、増幅法、継代法、凍結保存法を最適化し、30例以上の舌癌患者の検体から、極めて高い効率で、正常舌オルガノイド、舌癌オルガノイド株を樹立した。これらは長期継代培養、増幅、凍結保存後の再培養が可能であり、元の組織の特徴を維持していた。さらに、患者ごとにオルガノイド形成効率、増殖速度、抗がん剤・放射線治療への感受性が異なっていた。

このように、患者間の癌多様性を再現する舌癌オルガノイドは、各々の癌の薬剤感受性試験、新規治療標的の探索に有用であり、個別化医療への応用が期待できる。