The 39th Annual Meeting of Japanese Society of Oral Oncology

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[VS-01] Surgical method for the advanced carcinoma of the upper gingiva

〇Nobuhiro Yamakawa1, Tadaaki Kirita1 (1.Department of Oral and Maxillofacial Surgery, Nara Medical University)

【略歴】
2002年3月 日本歯科大学新潟歯学部卒業
2002年4月 奈良県立医科大学口腔外科学講座 臨床研修医
2004年4月 奈良県立医科大学大学院医学研究科(口腔・顎顔面機能制御医学)入学
2008年3月 奈良県立医科大学大学院医学研究科 単位修了・卒業
2008年4月 奈良県立医科大学附属病院 麻酔科 医員
2008年11月 奈良県立医科大学 口腔外科学講座 助教
2017年4月 奈良県立医科大学 口腔外科学講座 講師
2020年4月 奈良県立医科大学 口腔外科学講座 准教授
現在に至る

資格
日本口腔外科学会 専門医・指導医
国際口腔顎顔面外科専門医
国際口腔顎顔面外科専門医機構 口腔がん/再建外科専門医
日本がん治療認定機構 がん治療認定医
日本口腔腫瘍学会 口腔がん専門医


受賞歴
第55回日本癌治療学会 最優秀演題賞
第34回日本口腔腫瘍学会総会・学術大会 優秀ポスター賞
上顎歯肉癌は、その原発部位の解剖学的特徴から早期に顎骨や上顎洞へ進展、浸潤することも多く、治療に苦慮する場合も多い。また、後方への進展を認めることも多く、T4bにおいては咀嚼筋間隙、翼状突起または頭蓋底への浸潤、内頸動脈を全周的に取り囲む腫瘍となっているが、根治性を考えると翼状突起等の後方への進展例においても手術が選択されることが多い。
頸部リンパ節転移を認める症例においては、一般的に原発巣と頸部郭清組織を分けて切除されている施設が多いと思われるが、手術後に傍咽頭隙(副咽頭リンパ節)や頬部(頬リンパ節)に再発(後発転移)を認めることにより予後不良となる症例を経験することがある。上顎歯肉癌の転移経路は他の口腔癌とは異なりかなり複雑である。上顎歯肉癌の主な転移経路は、主に腫瘍の占拠部位により、頬側歯肉部から頬筋外側のリンパ管を経由し顎下リンパ節へ転移する経路と口蓋側歯肉からのリンパ管を経由し上内頸静脈リンパ節へ転移する経路である。その他にも、ルビエールリンパ節へは前方に存在する腫瘍でも鼻腔底粘膜下から上咽頭側壁を通る経路と硬口蓋後方から口蓋帆挙筋内側を通る経路が考えられる。また、正中付近にまで進展しているような症例や正中を超えるような症例では反対側の上内頸静脈リンパ節やルビエールリンパ節への転移の可能性もある。このように、上顎歯肉癌は原発巣の部位や進展により様々なリンパ節転移経路を念頭に置いて治療を行う必要があるが、 頸部リンパ節転移を認める症例では少なくとも主な転移経路のどちらを経由しているかを術前に判断し、頸部郭清組織との一塊切除が望ましいと考える。そのため、当科では転移経路を考慮した一塊切除を行っている。
具体的な術式においては、咽頭のリンパ管を通る経路が疑われる場合は副咽頭間隙の郭清を含めた一塊切除を行い、頬部のリンパ管を通ると思われる経路が主に疑われる場合は頬リンパ節を含めた一塊切除を行っている。副咽頭間隙の郭清を同時に行う際は、下顎を離断し、mandibular swing法を施行して原発巣と郭清組織を一塊として切除する。頬リンパ節を含めた切除を行う際には、口腔側は粘膜下、皮膚側は皮下で頬部の組織とともに一塊として切除を行っている。原発巣の切除は後方進展や上方進展を認める症例においてはWeber-Dieffenbachの切開線に準じて切開を行い、Cheek-Flapを翻転して術野を明示したうえで上顎骨の切除を行っている。
今回、副咽頭間隙の組織を含めた、上顎歯肉原発巣の切除と頸部郭清組織を一塊とした切除を行った進行左側上顎歯肉癌(T4bN2cM0)症例を供覧する予定である。