[I-O-14] 川崎病後の巨大冠動脈瘤を持つ患者における血栓溶解療法。10年間の川崎病全国調査から
キーワード:川崎病, 巨大冠動脈瘤, 血栓溶解療法
【目的】冠動脈瘤内、特に巨大冠動脈瘤内ではShare Stressが著しく低下しており、しばしば血栓が形成され、心筋梗塞の原因となる。それらに対する治療戦略としての血栓溶解療法につきまとめたので報告する。【方法】第17~21回(2001~2010年)の川崎病全国調査で巨大冠動脈瘤の報告があった全国275施設の415症例に対して二次調査アンケートを送付し、334症例(80.5%)について回答を得られた。このうち、巨大瘤とはいえない84症例と重複例36症例を除く214症例について解析した。【結果】血栓溶解療法は解析した214症例中38症例で施行されていた。初回血栓溶解療法時の年齢は平均37.5月齢で、発症後平均5.6ヶ月で施行されていた。施行された血栓溶解療法の回数は1回が25症例、2回が6例、3回が5例、4回が2例であった。血栓症の部位は、LADのみが13症例、RCAのみが3症例、LADとRCA両方が22症例であった。7症例で血栓溶解療法時にAMIを呈しており、そのうち3症例は数日のうちに亡くなられた。初回血栓溶解療法時の抗血栓療法は、怠薬をしていた1症例を除くすべての症例においてアスピリンとワルファリンの併用であった。治療法は30症例は経静脈的治療のみ、4症例は経冠動脈治療のみ、4症例は経静脈・経冠動脈両方で治療されていた。使用された血栓溶解薬はUrokinase (UK)20症例、Tissue - plasminogen acutivator (t-PA)13症例、両方が5症例であった。心筋梗塞を合併した7症例のうち3症例においてUKの経静脈投与、t-PAの経冠動脈投与の両方が施行されていた。血栓溶解療法が有効とされたのは28症例、無効とされたのは10症例で、有害事象は2症例に見られ、それぞれ軽度の鼻出血と後遺症を伴わない非常に小さな頭蓋内出血であった。【まとめ】巨大冠動脈瘤内の血栓症に対して、血栓溶解療法は十分考慮されるべき治療と考えられた。