[I-P-007] 肺動脈弁欠損症11例の検討
Keywords:肺動脈弁欠損, ファロー四徴症, BAP
【背景】肺動脈弁欠損症は新生児早期より重症呼吸不全で発症する稀な疾患である。胎児診断の進歩による早期診断や新生児期開心術の進歩によりどのように予後が変遷してきたかを検討する。【対象】2015年1月までに当院に入院した肺動脈弁欠損症11例(男4例)の臨床経過を診療録より後方視的に検討した。【結果】在胎週数は38週(33~40)、出生時体重2622g(1720~3106) g、胎児診断は3例でなされていた。合併症は食道閉鎖1例、鎖肛1例、22q11.2欠失症候群1例に認めた。手術前に人工呼吸管理を要したのは3例で、3例とも出生直後から施行されていた。手術は全例に施行され、手術時日齢は69(14~469)であった。右室流出路形成は一弁付きパッチによるものが8例、弁付き人工導管を用いたものが2例であった。肺動脈縫縮は9例に施行されていた。呼吸不全の進行により早期の手術介入を要したものは7例であった。死亡は3例、うち周術死が2例で、2例とも術前より呼吸不全を認めていた。残りの1例は術後4か月での感染、呼吸不全増悪による死亡であった。カプランマイヤー法による1年・5年・10年生存率はそれぞれ78%、65%、65%であった。死亡例と最近の症例を除いた6例において術後心臓カテーテル検査が施行されており、右室圧は平均38mmHg(19~58)、右室/左室圧比0.42(0.22~0.7)であった。術後遠隔期には流出路狭窄による右室圧の上昇のため、再手術が3例(うち導管置換1例)、カテーテルによるバルーン治療が4例にのべ7回行われていた。再治療回避率は1年・5年・10年がそれぞれ72%、58%、38%であった。【考察】肺動脈弁欠損症11例を検討した。特に新生児期より呼吸不全を発症する重症例では、早期の手術介入を要し、予後不良であった。乳児期以降での生命予後は良好であるが、低年齢での右室流出路形成術であり、高頻度で再治療が必要となる。