[I-P-106] マウス心室筋細胞におけるL型Ca2+チャネルのベラパミル感受性の生後変化
キーワード:L型Ca2+チャネル, ベラパミル, 薬剤感受性の生後変化
【背景】臨床の場では,ジヒドロピリジン系薬剤,ベラパミル,ジルチアゼムなどCa2+チャネル遮断薬が,高血圧や頻脈性不整脈の治療に用いられている.一方,新生児および乳児ではベラパミルの投与で徐脈や低血圧をきたすことがあるため,小児不整脈ガイドラインにおいてはベラパミルの使用は禁忌とされている.しかし,現在のところ,その電気生理学的背景は十分には明らかにされていない.【目的】本研究は,構造上異なる3種類のCa2+チャネル遮断薬(ニフェジピン,ベラパミル,ジルチアゼム)の心室筋細胞L型Ca2+チャネルに対する抑制作用の生後変化を系統的に明らかにすることを目的とした.【方法】種々の週齢(生後0日,1週齢,2週齢,4週齢,10~15週齢)のマウスから,ランゲンドルフ灌流法を用いた酵素 (コラゲナーゼ) 処理により,心室筋細胞を単離した. 全細胞型パッチクランプ法によりL型Ca2+電流の記録を行い,Ca2+チャネル遮断薬の抑制作用を調べた.用量反応 (抑制) 関係から半最大抑制濃度 (IC50) とHill定数を求めて,薬剤感受性を評価した.【結果】ニフェジピン,ジルチアゼムではIC50とHill定数の生後変化を認めなかった.ベラパミルではIC50が生後0日および1週齢マウスでは約50 nMであったのに対して,10~15週齢マウスでは約120 nMであった(Hill定数は変化しなかった).【考察】本研究結果により,L型Ca2+チャネルのベラパミル感受性は,成人期に比較して新生児期・乳児期で高いことが明らかになった.新生児期および乳児期の心筋では筋小胞体が未発達で細胞内Ca2+動態におけるL型Ca2+チャネルの役割が大きいと考えられているため,新生児期・乳児期におけるベラパミル投与は心機能低下を引き起こしやすいと想定された. 【結論】新生児期および乳児期の心室筋細胞L型Ca2+チャネルはベラパミル感受性が高いことが示唆された.