[I-P-107] 右心肥大モデルラットにおける肝臓線維化進展因子の検討
キーワード:右心不全, 肝臓線維化, 心房線維化
【背景】右心不全はファロー四徴症術後やフォンタン術後の長期予後を規定する因子として重要である.また,右心不全に続発する肝臓の線維化進展は不可逆的所見であり,その進行を予期することは臨床上,極めて重要である.【目的】右心肥大モデルラットにおける心房,肝臓の病理組織像を評価し,線維化進展因子を検討する.【方法】生後5週SDラット(150g~200g)に対し肺動脈絞扼術(PAB;n=12)を行い,右心肥大モデルラットを作成した.術後4週後,心エコー検査施行後(vivid8 12Mhzプローブ)にペントバルビタールで安楽死を誘導し病理学的検討を行った.線維化はMasson Tricrome染色後に線維化率を算出した.対象はPABを施行しない同週齢ラット(sham;n=8)を用いた.【結果】PAB群の右室重量はshamと比較して3倍以上に肥大し,右室線維化率はPAB群で有意に増加(P<0.01;17.6vs4.8%)を認めた.肝臓重量/体重,右房と肝臓の線維化率は有意差を認めなかった.PAB群の2匹で肉眼的な肝うっ血を認めた(PAB+群).PAB+群の心拍出量は肉眼的うっ血肝を認めなかった群(PAB-群)と比較し,著明に低下(36.0vs81.6ml/m)を認め,右房と肝の線維化は2倍以上に増加を認めた.右房面積はPAB+群,PAB-群間でともに有意な拡大を認めたが,両群間での差は認めなかった.【考察】心不全における肝臓の線維化の機序は,肝臓がうっ血することによる直接的な肝障害と心拍出量低下に伴う肝臓の虚血が原因とされている.右心肥大において心拍出量が維持されている状況では右心室の線維化だけが先行し,右心不全の合併により心拍出量が低下することによって右房,肝臓の線維化が進行した.臨床症例において,心拍出量が低下している症例では,より線維化進行に注意が必要と考えられた.