[I-P-150] 前胸部誘導の再分極異常を認めたスポーツ心臓の一例
Keywords:安静時12誘導心電図, 再分極異常, スポーツ心臓
【背景】運動選手の心臓突然死予防のため、安静時12誘導心電図によるスクリーニングは有用とされている。スポーツ心臓の心電図異常は多岐にわたり、器質的心疾患との鑑別が必要となることも多い。前胸部誘導の再分極異常を認め、心筋症との鑑別を必要としたスポーツ心臓の一例を経験したので報告する。【症例】17歳男子。小学生からサッカーを毎日2~3時間練習。心筋疾患、不整脈や若年での突然死の家族歴なし。中学1年の学校心臓健診、中学2年の心雑音精査の心電図でV1~V5の陰性T波(TWI)を認めたが、いずれも精査で異常を認めなかった。胸痛を主訴に当科受診。心電図上、洞性徐脈、左側胸部誘導の高電位、早期再分極とV1~V4のTWIを認めた。心エコーで左室拡張末期径は45.3mm、壁運動や拡張能に異常は認めなかった。血液検査、トレッドミル、ホルター心電図は異常なし。冠動脈CTでは、冠動脈起始異常や狭窄病変は認めなかった。心臓MRIでは心筋症を疑うような遅延造影や壁運動異常は認めなかった。その後胸痛は自然消失した。経過中、運動停止後2週間の心電図では前胸部誘導のTWIは消失し、運動再開後2週間で再びV3までTWIを認めた。短期間の運動停止でTWIの改善認めたため、スポーツ心臓と診断し経過観察を継続している。【考察】運動選手における胸部誘導のTWIはスポーツ心臓としては非典型的であるが、人種差が報告されている。日本人の運動選手でTWIを認めたという報告はない。運動選手の非典型的心電図異常者は、心電図異常のない群と比較し、経過中に心疾患陽性となる例が多いとされているため、注意が必要である。しかし、本症例では運動の有無でTWIが短期間で変化したため、運動による心筋のremodelingを示唆する所見と考えた。【結論】運動停止により変化する前胸部誘導の再分極異常を認めた一例を経験した。心筋症との鑑別を要したが、心電図の経時的変化がスポーツ心臓の診断の決め手となった。