[I-S06-03] 小児期心筋症に対する再生治療の現状と課題
キーワード:心筋症, 心不全, 再生治療
日本においても、重症心不全小児に対する補助人工心臓や心臓移植による医療がようやく現実のものとなったが、ドナー不足の問題は深刻であり、合併症など多くの課題に直面しているのも事実である。一方、自己の細胞を利用して臓器機能不全を治療する再生型治療の研究が盛んに行われ、心機能不全に対しても基礎研究とともに臨床応用への試みもなされている。成人の虚血性心筋症に対して、海外において様々な自己細胞(間葉系幹細胞など)を用いた臨床試験が行われたが、未だ確立したものはなく見直しの段階である。日本で開発された、成人の重症拡張型心筋症に対する自己筋芽細胞シート移植療法は、一定の心機能回復効果を示した。しかし、その機序はパラクライン効果によると考えられnon-responderが存在し課題が残る。小児の重症心不全に対する自己筋芽細胞シート移植も臨床試験が開始されたが、未だ解析ができる症例数は行われていない。シート化する細胞源として、ヒトiPS細胞由来心筋細胞様細胞シートが注目され、動物実験において一定の効果が証明されているものの臨床応用にはいくつかの関門が残されている。ほかにも、内在する心筋前駆細胞を用いた心筋再生、心筋線維芽細胞から直接リプログラミングによる心筋細胞再生、脂肪組織由来多系統前駆細胞を用いた心筋再生の研究も進行中である。現在までの再生研究の成果は、不全心筋の心機能をある程度回復するに留まっており、臓器としての心筋再生(左心室の再生、右心室の再生)には遠い。小児循環器領域において、心筋疾患としての心筋症のみならず、先天性心疾患の心室そのものを心筋症(不全心筋)と捉えることが必要な場合もあり、心筋再生医療のニーズは高い。今後、心臓発生のメカニズムに関する基礎的理解がさらに深まり、これまで蓄積された知識と技術と融合して、真に有用な再生医療の臨床応用が達成される日がくることが期待される。