[II-P-133] 未熟児動脈管開存症治療におけるアミノ酸輸液組成の重要性
Keywords:動脈管, アミノ酸, グルタミン酸
【背景】未熟児では酸素に対する動脈管平滑筋の収縮が弱いため、症候性動脈管開存症(PDA)を回避するためには動脈管収縮を促す酸素以外の手段を講ずることが重要である。近年、超早産児に対して総合アミノ酸製剤の積極的な投与が行われているが、輸液中の各アミノ酸の動脈管収縮に対する作用の報告はない。【目的】動脈管収縮に関与するアミノ酸の検討を行う。【方法】横浜市立大学市民総合医療センターに入院した在胎22-27週の児9名(PDA無し:4名、PDA有:5名)の臍帯血、日齢2、日齢7の血漿を用いてアミノ酸分析を行った。アミノ酸腹腔内投与30分後のラット動脈管の収縮は全身急速凍結法を用いて評価し、ラット動脈管のmRNAとノルアドレナリンの定量はそれぞれRT-PCR、ELISAで検討した。免疫組織染色はヒトとラットの動脈管を用いて行った。本研究は倫理委員会の承認のもと行われた。【結果】超早産児のアミノ酸分画のうち、日齢2でPDA有群ではPDA無しの群に比べてグルタミン酸(Glu)の血中濃度が有意に低かった。このためラットでGlu受容体サブタイプ別の発現を検討したところ、胎生19日(早産児)と胎生21日(成熟児)ともに動脈管で大動脈に比してAMPA型サブユニットGluR1が有意に高発現していた(2.5倍)。GluR1はヒトとラット動脈管で、ともに血管周囲神経に高発現していた。ラット胎児へのGlu投与は、対照群に比べて有意に動脈管を収縮させ、その効果はAMPA型受容体阻害薬NASPMで消失した。さらに、Glu投与によりラット動脈管で大動脈に比べて1.6倍のノルアドレナリンが産生され、αアドレナリン受容体阻害薬プラゾシンを用いるとGluによる動脈管収縮効果は消失した。【考察】Gluは動脈管周囲神経終末のGluR1に作用し、ノルアドレナリンを産生させることにより動脈管を収縮させることが示唆された。【結論】Gluに着目してアミノ酸輸液の組成を最適化することで未熟児動脈管閉鎖を促す可能性があると考えられた。