[II-P-135] 肺動脈発生可視化モデルによる先天性心疾患に伴う肺血管疾患の検討
Keywords:総動脈幹症, 22q11症候群, IP3R2型
【背景・目的】
先天性心疾患の診療では、肺血管低形成、肺高血圧などの肺血管疾患によって治療・管理に難渋することがあり、現状の課題である。先天性心疾患における肺動脈の発生を明らかにすることにより、課題解決の糸口が見つかる可能性がある。私たちは、ノックアウトマウス(KO)を用いてイノシトール三リン酸受容体(IP3R)の心臓・血管発生および肺高血圧の進展に関与する機序を解明してきた。今回、IP3R2型KOを用いて肺動脈発生の可視化を試み、先天性心疾患に伴う肺血管疾患について検討した。
【方法・結果】
私たちが解析に利用したIP3R2型KOには、IP3R2型の発現部位を標識するLacZマーカー遺伝子が導入されている。このマウスで胎生期の肺を解析したところ、IP3R2-LacZマーカーは肺動脈平滑筋に特異的に発現していた。胎生10.5~18.5日のIP3R2-LacZマーカーの発現パターンを経時的に観察すると、発生初期には中枢肺動脈が標識され、発生が進むにつれて徐々に枝分かれする末梢肺動脈まで標識されるようになり、肺動脈の発生過程をあたかも血管造影のように可視化できることがわかった。次にIP3R2-LacZマウスを22q11症候群モデルマウス(Tbx1変異マウス)と交配して、このマウスにみられる総動脈幹症の肺動脈発生の可視化を試みた。その結果、中枢から末梢に向かう枝分かれした肺動脈の発生・構築は正常に見えたが、肺自体がやや小さく、透過性が低下し、肺動脈末梢の伸展が乏しかった。組織学的には肺胞壁形成細胞が多く、肺胞腔が小さかった。
【考察・結論】
IP3R2-LacZは、肺動脈発生を可視化するモデルとして有用である。今回の検討により、肺血管内皮が初期肺全体の毛細血管叢から発生すると推定されるのに対して、肺動脈平滑筋は中枢側から末梢側へと経時的に発生・伸長することが示された。また、総動脈幹症を呈する22q11症候群モデルマウスでは、末梢肺胞レベルでの組織・血管構築の異常が示唆された。