[II-P-150] トロンビン‐プラスミン生成試験による川崎病急性期における包括的凝固線溶機能の評価
キーワード:川崎病, 凝固, 線溶
【背景】川崎病急性期は凝固亢進状態であることは知られているが、個々の凝固因子から検討されており、包括的な凝固機能の評価はない。近年、測定機器の発展により包括的凝固機能解析からの病態把握も行われつつある。トロンビン‐プラスミン生成試験(T/P-GT)は、凝固線溶能のトロンビン生成(TG)とプラスミン生成(PG)を同時系列上にモニタリングし、様々な凝固パラメーターを評価できる。T/P-GTを用いて、川崎病急性期における包括的凝固機能について検討した。【方法】対象は抗凝固療法症例を除く、川崎病患児43名。年齢:生後3か月~5歳(中央値1歳8か月)。本症罹患時でのγグロブリン製剤投与前(Pre)、投与1週間後(1W)、投与1か月後(1M)に血液検査を施行した。TGとPGのLag time(LT;min)、最大量(Peak;nM)、最大到達時間(ttPeak;min)、総生成量(EP;nMxmin)を計測した。またフィブリノーゲン量(Fbg)も測定した。測定値は中央値±標準偏差で示し、統計的解析はMann-Whitney検定を行った。【結果】FbgはPreで729±173 mg/dlと高値を示すが、1Wでは正常化した。T/P-GTでの生成開始時間を示すLTは、1WでTG/PGともPreや1Mに比し有意に延長していた(4.5±4.8/6.8±3.0 min)。しかしEPは1WでTG/PG(2,143±191/455±35 nMxmin)は有意に高値を認めた(p<0.01)。一方、PeakはPGにおいてPreより1Wで12.6±2.5 nMと有意に高値を示し(p<0.01)、1Mは正常化してした。【結論】急性期川崎病は治療により増加していたFbgは低下するが、治療開始1Wでは凝固・線溶能は亢進状態を呈していることがわかった。γグロブリン治療経過における凝固線溶機能評価は病態把握に有用であると思われた。