[III-P-040] 胎児徐脈を呈したカテコラミン誘発性多形性心室頻拍(CPVT)の一例
キーワード:胎児徐脈, CPVT, 早期診断
【背景】カテコラミン誘発性多形性心室頻拍(CPVT)は、学童期に失神や突然死で発症する致死性不整脈のひとつである。安静時心電図は徐脈傾向がみられる以外所見に乏しく、家族歴のないCPVTでは発症前に診断することは非常に困難である。今回我々は、胎児期から徐脈傾向を認め、やがてCPVTと診断した一例を経験したので報告する。【症例】 10歳男児。妊娠28週の定期妊婦健診で、胎児心拍数が90回/分に低下していた。胎児心エコーでは、心内奇形はなく、房室ブロックも認めず洞性徐脈と判断した。胎動の低下もあり、常位胎盤早期剥離が疑われ緊急帝王切開となった。出生直後の心拍数は130bpmで、NICU退院まで90-110bpmと比較的徐脈で経過した。心電図では、房室ブロックやQT延長などを認めず、洞性徐脈と診断した。 2歳ごろまで喘息様気管支炎による入院を繰り返したが、その際のモニター心電図では不整脈は認めなかった。5歳時に徐脈(心拍数40-50bpm)が持続しているため、ホルター心電図検査を施行。運動時・興奮時に一致した2方向性VT、多型性VTを認めCPVTと診断、βブロッカー内服による治療を開始しVTは消失した。【考察】CPVTはリアノジンレセプターによるCa調節機構が過活性に変異したことにより起こる疾患で、心室性不整脈だけではなく、洞結節機能不全や房室伝導障害なども高率に合併する。乳幼児期は心室筋細胞におけるリアノジンレセプターの発現が未熟であるため不整脈は出現せず、学童期以降に致死的不整脈が出現して初めて診断されることが多い。しかし、本症例では胎児期から洞性徐脈に気付かれていたため、フォローすることで早期に診断治療を行うことができた。【結語】胎児期の洞性徐脈の原因にはCPVTなど致死性不整脈が背景にある場合があり、経時的なフォローをすることで早期診断治療が行える可能性がある。