[III-P-054] 心移植後の管理中にRSV感染症の治療に難渋した2例
キーワード:心臓移植, RSウィルス, 免疫抑制剤
【序文】RSVは免疫抑制状態において下気道感染のリスクが高く、重篤化し死亡することも稀ではない。今回、心移植後の慢性期管理中にRSVに感染し、治療に難渋した2例を経験したので報告する。【症例】症例1:6歳女児。拡張型心筋症にて3歳時に心移植を施行。免疫抑制薬はタクロリムス(FK)、エベロリムス(EVL)。入院2週間前から感冒様症状、発熱を認め、症状持続するため入院。RSV迅速検査は陽性で、胸部X線・CTで肺炎像を認めた。免疫抑制薬の減量を行うも2ヶ月に渡り間欠的な発熱、咳嗽、KL-6高値が持続。EVLをミコフェノール酸モフェチル(MMF)に変更後10日目に解熱した。症例2:8歳男児。拘束型心筋症にて2歳時に心移植を施行。免疫抑制薬はFK、MMF。入院1週間前から感冒様症状、発熱を認め、症状持続するため入院。RSV迅速検査は陽性で、免疫抑制薬の減量で経過観察するも解熱せず。IVIG投与(160mg/kg×3日)を行うも、臨床症状、胸部X線所見は増悪傾向であった。その後再度IVIG大量投与(1g/kg×1日)施行したところ解熱し、臨床症状の改善を認めた。発熱持続期間は18日間であった。【考察】症例1では、EVLが樹状細胞から分泌されるINFを阻害し、RSV排除に必要なT-cell活性化を抑制することが発熱の遷延化に寄与した可能性がある。EVL内服中の移植患者におけるRSV感染時には留意すべきである。症例2では、通常量のIVIG投与ではなく、大量投与が有効であった。ガイドライン上では明らかな有効性は示されていないが、治療選択肢の1つに成り得ると思われる。【結論】心移植後管理の注意点として、RSV流行期にはその感染に留意すべきであり、疑われれば迅速検査を用いてただちに診断をつけ免疫抑制薬の減量や変更などの治療を考慮すべきである。