[III-P-093] 成人先天性心疾患に合併した心房性不整脈—右心房拡大とP波高の経時的変化—
Keywords:心房性不整脈, 成人先天性不整脈, P波
【背景・目的】成人先天性心疾患の約10%に心房性不整脈を合併し、特に右心系の異常を有するものはリスクとされるが、その合併を予測するものはない。また心房性不整脈を合併した例の中で、右房拡大に比してP波減高を呈する例を経験する。【対象・方法】二心室型修復をした成人先天性心疾患患者のうち心房性不整脈(EAT、AFL、Afib)を発症した16例(男8例)を対象とした。不整脈発症直前のエコー四腔像から算出した右心房面積(体表面積補正)と、12誘導心電図の四肢II誘導のP波高との関連について検討した。不整脈を発症していない年齢を一致させた二心室型修復患者23例を対照とした。【結果】不整脈発症年齢は20.2歳(10歳~39歳)、手術から15.2年(5.2年~30.5年)経過していた。EAT 5例、AFL 11例(Afibへ移行5例)、Afib 1例で、TOF 8例(MAPCA合併Rastelli 2例、自己弁温存型心内修復6例)、C-TGA 3例(Double switch 2例、Rastelli 1例)、AVSD 2例、VSD術後、ASD術後、Critical PS術後、Congenital MR術後がそれぞれ1例であった。中等度以上TR 10例、PR 5例、TS 2例、PS 5例、PH 2例で14症例で何らかの右心系遺残病変を有していた。不整脈発症群と対照群における右心房面積は、14.2±8.7cm2/m2 vs 10.8±2.0cm/m2(p<0.05)、P波高は0.091±0.052mV vs 0.102±0.048(p=0.21)であった。不整脈発症群、対照群のいずれにおいても右心房面積とP波高には相関が見られたが、不整脈発症群は右房拡大に比してP波高が低下している傾向があった。またP波高が経年的に低下していた例があり、不整脈発症の素地となる心房筋障害が進行していたことが推察された。【結語】右心房拡大に比してP波減高がある症例では遠隔期の心房性不整脈の発症リスクとなる。特に経年的にP波高が低下する例では注意すべきである。