[III-P-117] 川崎病血管炎におけるHMGB1の果たす役割の検討
キーワード:川崎病, HMGB1, モデルマウス
【背景】川崎病血管炎の病変局所における増悪因子には不明な点が多い。HMGB1は非ヒストン核内蛋白として同定されたが、細胞外で炎症性サイトカインとして働くことが発見され、腫瘍・敗血症・血管炎などの様々な領域で注目されている。我々は一昨年の本学会で、マウスワイヤー傷害モデルを用い、抗HMGB1中和抗体の投与が、傷害後の血管リモデリングを抑制することを報告した。今回は、同様の中和抗体を川崎病モデルマウスに投与することで、血管炎形成への影響を検討した。【方法】4週令オスC57BL/6マウスに対してCAWS(Candida albicans water-solubule fraction)2mg/doseを5日間連続して腹腔内投与することで、川崎病類似血管炎を惹起させるモデルを用いた。抗HMGB1中和抗体 2mg/kg/doseを5日間腹腔内投与するHMGB1群(n=20)と、control chicken IgY fraction 2mg/kg/doseを投与するコントロール群(n=20)を作成し、投与開始2週間後にsacrificeして病理切片を解析した。解析には、これまで報告されている、病変の範囲を示すExtent scoreおよび炎症の程度を示すinflammation scoreを用いた。また、sacrifice時に血清を採取し、Milliplex kit(MerckMillipore社)を用いて炎症性サイトカインを測定した。【結果】CAWS投与後2週間の時点で、両群間で、病変形成数・Extent scoreには有意な差がなかったが、inflammation scoreは、HMGB1群の方が有意に低値を示し(p<0.05)、病変の炎症が抑制されていることが明らかとなった。また血清IL-6は、HMGB1群で有意に低下していた(95.9±45.6 vs 22.6±5.2 pg/ml, p=0.003)。【考察】川崎病モデルマウスにおいて、HMGB1に対する中和抗体の急性期投与が病変の重症度を抑制していた。現在多施設共同研究で得られた川崎病患者血清におけるHMGB1濃度についても解析を行っており、本学会で結果を報告できる予定である。