第51回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム15
児童生徒の心臓性突然死

2015年7月18日(土) 08:30 〜 10:00 第1会場 (1F ペガサス A)

座長:
太田 邦雄 (金沢大学)
吉永 正夫 (鹿児島医療センター)

III-S15-01~III-S15-06

[III-S15-05] 学校における児童生徒の心臓性突然死を防ぐために-症例から学ぶ現場の評価点と問題点-

平田 悠一郎1,2, 山村 健一郎1, 村岡 衛1, 白水 優光1, 寺師 英子1, 中島 康貴1, 鵜池 清1, 永田 弾1, 森鼻 栄治1, 原 寿郎1 (1.九州大学病院 小児科, 2.九州大学病院 救命救急センター)

キーワード:児童生徒, 心臓性突然死, 救急蘇生

【背景】2004年7月に自動体外式除細動器(AED)の使用が一般市民にも認められ、急速にAEDの設置や一次救命処置(BLS)の教育が普及している。幼稚園や学校においてもAEDの設置は進み、平成22年の文部科学省による調査では幼稚園で40%以上、小中学校では95%以上のAED設置率を達成している。また職員のみならず児童生徒にもBLS講習を受講させようという機運も高まっている。しかし実際にAEDを設置しBLS講習を実施していても、それが奏功した症例がある一方で、体制の不備から不幸な転帰を辿った症例もある。
【目的】保育園や幼稚園、学校で心原性心肺停止に陥った症例について現場の評価点や問題点を検討し、より良い突然死の予防体制づくりに向けての課題を見出す。
【方法】2012年から2014年の3年間に保育園や幼稚園、学校で心原性心肺停止に至り、当院に搬送された5症例について、現場での蘇生行為、時間経過、日常の危機管理体制などを振り返る。
【結果】5症例のうち保育園・幼稚園の事例が2例、中学校が3例で、4例が生存退院し、1例が死亡した。事故は全て遊戯や運動などの活動中に発生し、屋外発生が4例、屋内発生が1例であった。全例に居合わせた者による心肺蘇生(Bystander CPR)が実施され、AEDが作動した4例は全て心室細動であった。生存例には事故の直前にBLS講習を実施し、模擬訓練を行っていた事例もあった。一方で卒倒した現場ではBystander CPRが行われず、一度保健室に運び入れた後にCPRを開始するなど、時間的ロスの大きい症例もあった。
【結語】発生してしまった心停止を突然死にさせないためには、単にAEDを設置しBLS講習を行うだけでは不十分で、実際の流れに沿ったシミュレーションの実施や校内における適切なAEDの設置場所の検討など、現状以上の予防体制づくりが必要である。医療従事者も突然死の予防という視点からの認識を深め、現場に働きかけを行うなどの努力が不可欠であろう。