[III-S18-04] 小児心筋炎診断・治療の現況と課題
Keywords:心筋炎, 急性心不全, 心筋症
小児期の心筋炎は主にウイルス感染で発症する。コクサッキーB群ウイルスやエコーウイルスなどのエンテロウイルス、一部でアデノウイルスやパルボウイルスが原因となる。組織学的にはウイルス感染によるリンパ性心筋炎が主体で、一部に自己免疫疾患や薬剤に起因する好酸球性心筋炎が見られる。発症様式から急性心筋炎と慢性心筋炎に分けられるが、急性心筋炎には発症初期から重篤な心肺機能不全に陥る劇症型心筋炎が存在する。症状としては、発熱や咳嗽などの感冒症状や悪心嘔吐などの消化器症状などを前駆症状として、数時間から数日の経過で急速に心不全が進行する。診断は、臨床症状とともに、白血球増多、軽度の炎症反応陽性、心筋逸脱酵素(LDH,CJ,CK-MB,TnT)の上昇、心電図変化(低電位、ST上昇、陰性T波、期外収縮、房室ブロック)、心エコー所見(左室壁運動低下、心筋肥厚、心嚢液の貯留)などの検査所見からなされる。特にTnTの上昇は、劇症型心筋炎における重症度を反映する。年長児では病初期に右室心内膜心筋生検を行い、多数の単核球(一部多核球)の浸潤、心筋細胞の断裂や融解、間質の浮腫性変化を確認する。ただし幼小児ではこれらの特徴的な形態変化が見られないことが多く注意が必要である。内科的治療としては、急性心不全によるポンプ失調に対して、利尿薬、ドブタミン、カリペプチド、PDEIII阻害薬を投与する。期外収縮には抗不整脈薬の投与、完全房室ブロックには経静脈ペーシング治療を行う。また小児期の心筋炎ではガンマグロブリン大量療法が有効なこともある。これらの内科的治療で循環不全が改善しない場合には、すみやかに年長児では経静脈的に乳幼児では開胸下に心肺補助循環の装着を実施する。松陰期心筋炎の予後は、1/3が治癒、1/3が新機能障害を残して軽快、1/3が拡張型心筋症へ進展するとされている。今回の発表では小児期心筋炎の診断と治療に関して最新の知見を加え解説する。