第52回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

自律神経・神経体液因子・心肺機能

一般口演1-18(I-OR118)
自律神経・神経体液因子・心肺機能

2016年7月6日(水) 08:50 〜 09:40 第F会場 (シンシア サウス)

座長:
田中 高志(宮城県立こども病院 循環器科)

I-OR118-01~I-OR118-05

08:50 〜 09:40

[I-OR118-04] Fontan循環におけるリンパマッサージの慢性効果と循環動態変化

栗嶋 クララ1, 澁谷 智子2, 宮崎 沙也香2, 斎藤 郁子2, 大津 幸枝2, 梶井 亜紀子2, 桑田 聖子1, 岩本 洋一1, 石戸 博隆1, 増谷 聡1 (1.埼玉医科大学総合医療センター 小児循環器部門, 2.埼玉医科大学総合医療センター 看護部)

キーワード:リンパマッサージ、Fontan循環、自律神経

【背景】Fontan循環の高い中心静脈圧は,リンパの鬱滞を惹起し,リンパ漏や炎症性サイトカインの賦活化からFailing Fontanの病態に関与しうる.我々は,リンパマッサージが急性期効果としてリンパ鬱滞の改善のみならず,交感神経抑制を介した心拍数減少,静脈機能改善を認め,Fontan術後患者の予後改善のための非薬物療法として有用である可能性を報告した.
【目的】リンパマッサージの慢性効果を検討する.
【方法】説明と同意を得た希望者にリンパマッサージを施行したFontan術後患者7名を対象とした.リンパマッサージは1回1時間,1-2週間に1回施行した.開始前および開始1年以後の,Holter心電図による心拍数(HR),心拍変動解析による副交感神経活性(HF),MRIまたは非侵襲性心拍出量モニター(エスクロン)による心係数(CI),末梢静脈から推測した中心静脈圧(CVP),頸動脈エコーによる血管Stiffnessを評価した.
【結果】リンパマッサージ前後で,最低,平均,最高HRは低下傾向を示し(各々mean 62.3 vs. 60.8bpm, 83.9 vs. 81.4bpm, 134 vs. 130bpm),HFはほとんどの症例で増大した(mean 2.4 vs. 3.8).また,CIはわずかに低下し (mean 3.1→2.7L/min/m2)、CVPは多くの症例で低下した(mean 10.6→9.3mmHg).年齢変化を加味した頸部動脈のStiffness係数も有意に低下した.
【考察】リンパマッサージは,急性期効果のみならず,長期的効果としても交感神経活性抑制から静脈機能を改善し,CVPを下げる可能性が示唆された.また,CIが維持できる範囲内でHRを抑えることにより,Fontan術後患者において長期予後改善が期待される.
【結論】リンパマッサージは,長期的にFontan術後合併症を予防する非薬物療法として有用な可能性がある.