14:35 〜 15:55
[I-OR124-05] 先天性横隔膜ヘルニア術後肺高血圧に対する肺血管拡張薬の効果と限界
キーワード:横隔膜ヘルニア、肺高血圧、シルデナフィル
【背景】先天性横隔膜ヘルニア(CDH)根治術後PHは生命予後と関連する報告がある。しかしながら、CDH術後PHに対する肺血管拡張薬による治療に関してまとまった報告は少ない。【目的】当施設でCDH術後PHに対して内服治療を行った症例について、臨床経過をまとめ、その効果と副作用について検証すること。【方法】2008年10月~2015年12月に、当院で治療を行ったCDH症例69例について、診療録より臨床情報を後方視的に調査し、CDH術後PHに対する肺血管拡張薬の効果と副作用を検討した。【結果】期間中、CDH術後PHに対して加療した11例のうち、途中転院の3例を除く8例について解析した。左側CDH7例、右側CDH1例、出生前診断は8例中6例でなされていた。染色体異常を伴った症例はなかった。内服薬の導入理由はNO減量中止目的が6例、NO中止後に残存するPH治療目的が2例であった。治療内容は8例全例でsildenafilが用いられ、1例はberaprostとの2剤併用、もう1例はberaprost、bosentanとの3剤併用であった。sildenafilの開始時投与量は0.9mg/kg/day(0.7-1.0 mg/kg/day)、最大投与量は2.4mg/kg/day(1.0-3.6 mg/kg/day)であった。NO中止目的の6例中5例では平均16日でNOを中止でき、NO中止後のPH治療目的の1例も内服導入後安定した血行動態が得られた。一方で、腎不全、消化管穿孔合併の1例は、改善に乏しく日齢50日に他界した。また、慢性肺疾患を合併した1例は胃食道逆流のため、sildenafilの増量が困難で、3剤併用となっている。この1例を除き、内服中止あるいは増量の中止を要する副作用が出現した症例は認めなかった。【結論】CDH術後PHに対する肺血管拡張薬による治療においては、大多数の症例で、単剤投与で副作用もなく管理可能だが、合併症によっては無効例、多剤投与が必要な症例が認められた。今後は前方視的に症例を集積し、適切な肺高血圧の治療方針を確立する必要がある。