第52回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

心血管発生・基礎研究

一般口演1-25(I-OR125)
心血管発生・基礎研究

2016年7月6日(水) 09:35 〜 10:15 第C会場 (オーロラ ウェスト)

座長:
南沢 享(東京慈恵会医科大学 細胞生理学講座)

I-OR125-01~I-OR125-04

09:35 〜 10:15

[I-OR125-02] 心筋前駆細胞特異的表面抗原CSA11は心筋分化発生に重要な役割を果たす

石田 秀和1,2, 小垣 滋豊1, 高橋 邦彦1, 大薗 恵一1, 八代 健太2 (1.大阪大学大学院医学系研究科 小児科学, 2.ロンドン大学クイーンメアリー校 ウィリアムハーベイ研究所)

キーワード:心筋前駆細胞、CRISPR/Cas、心筋分化

(背景と目的)
最近我々は、マウス初期胚の心筋前駆細胞に対する次世代シークエンサー解析により、心筋前駆細胞特異的表面抗原CSA11(仮称)を発見した。これまで中胚葉系譜においてCSA11が果たす生理的機能については不明であり、今回我々は、CRISPR/Cas9によるゲノム編集技術を用いて、マウスES細胞(in vitro)とマウス胚(in vivo)においてCSA11のノックアウト(KO)変異体を作成することで、心筋の分化発生におけるCSA11の機能解析を行った。
(方法)
CRISPR/Cas9システムを用いて、CSA11とそのファミリータンパク(CFA; CSA11 Family protein A)のKO-マウスES細胞を作成し、心筋細胞への分化能を検討した。また、マウス受精卵に対するCRISPR/Cas9によるダイレクトゲノム編集法を用いてCSA11CFAのKOマウスを作成し、心臓の表現形を解析した。
(結果)
ES細胞において、CSA11CFAの単独KOでは、心筋細胞分化に有意な変化を認めなかった。CSA11単独KOではCFAのmRNA発現が亢進しており、CSA11の機能喪失はCFAによって代償されている可能性が示唆された。CSA11/CFAのダブルKO(DKO)-ES細胞では心筋細胞分化が著しく低下していた。既知のCSA11下流シグナルには有意な変化がなく、既知の共役タンパクのKOでも心筋細胞分化に影響がないため、CSA11は別の新規の経路を介して働くものと推察された。一方、CSA11/CFA-DKOマウス胚では、胎生8日にルーピングした通常の心構造が認められるたが、心筋細胞で発現するANFは著明に低下していた。胎生17日では緻密層が極めて菲薄な心筋緻密化障害様の所見が得られた。このDKOマウスは、出生後は合併する他臓器障害によって生存が困難であり、生存率や心機能の解析はできなかった。
(結論)
CSA11は、心筋細胞の分化や発生において重要な役割を果たしており、それはCFAによって代償される。心臓におけるCSA11のシグナル経路は全く新規のものであるが、その詳細を同定するには至らなかった。