第52回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム4(I-S04)
最新の不整脈診断と治療

2016年7月6日(水) 14:40 〜 16:10 第A会場 (天空 A)

座長:
住友 直方(埼玉医科大学国際医療センター 小児心臓科)
堀米 仁志(筑波大学医学医療系 小児科)

I-S04-01~I-S04-05

14:40 〜 16:10

[I-S04-02] 胎児頻脈性不整脈の経胎盤治療

三好 剛一 (国立循環器病研究センター 周産期・婦人科)

胎児頻脈性不整脈は心房粗動と上室性頻拍が大部分を占めるが、まれに心室頻拍に遭遇する。持続すると心不全、胎児水腫より胎児・新生児死亡に至るため、治療介入を要する症例が少なくない。特に週数が早ければ早いほど、早期娩出・新生児治療よりも、胎児治療が優先される。胎児治療に当たっての最大の注意点は、胎児不整脈診断の不確実性、および母体・胎児への副作用である。母体を介しての治療となるため、母体の安全性への配慮を常に忘れてはならない。
2014年AHAステートメントで、胎児の心房粗動と上室性頻拍に対する第1・第2選択薬として、ジゴキシン、ソタロール、フレカイニドの3剤が高い推奨レベルを得ている。独自に実施したsystematic reviewでも、いずれの薬剤においても高い奏効率が確認された。その一方で、胎児・新生児死亡率が6-13%あり、なかでもソタロール、フレカイニドは催不整脈作用との関連が否定できないものもあるため、注意が必要である。
胎児不整脈診断は胎児心エコーが主体で、心房・心室のリズムから不整脈のタイプを推測しているが、リエントリーなのか自動能亢進なのかの鑑別も実は容易ではない。胎児心磁図や経母体腹壁胎児心電図が臨床応用されており、より電気生理学的診断法に近い情報が得られるが、特殊な器機や解析に熟練を要する。そこで、産科医が分娩監視に日常的に用いている胎児心拍数モニタリング(CTGモニター)に着目している。胎児心拍数をトレンドで観察することで、心拍数基線の変動、不整脈のon/offが容易に捉えられ、診断の一助となる。また、長時間の装着も可能なため、胎児不整脈の正確な持続時間、治療効果の判定、副作用の監視にも極めて有用である。
 現在、先進医療Bとして「胎児頻脈性不整脈に対する経胎盤的抗不整脈薬投与に関する臨床試験」を実施しており、胎児治療の有効性および安全性を確認中である。目標の50例に近づいており、結果を報告できる日も近い。