第52回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム6(I-S06)
胎児診断のピットホールから学んだこと

2016年7月6日(水) 08:40 〜 10:10 第B会場 (天空 センター)

座長:
稲村 昇(大阪府立母子保健総合医療センター 小児循環器科)
前野 泰樹(久留米大学医学部 小児科)

I-S06-01~I-S06-05

08:40 〜 10:10

[I-S06-03] 胎児診断のピットホール 〜胎児診断のカウンセリングでの経験から〜

権守 礼美 (神奈川県立こども医療センター)

 当院では、先天疾患のこども・家族を対象とした支援・カウンセリング部門として、「新しい命のためのサポートセンター」が平成25年に開設された。サポート員である認定遺伝カウンセラーや家族支援専門看護師、小児看護専門看護師が、医師や助産師・ケースワーカーとともに家族支援を行っている。演者は、小児看護専門看護師として、重症心疾患の胎児診断を受けた家族を対象に、胎児診断から出生後の治療まで継続的に関わり、家族がこどもの最善の利益を考えて自己決定できるように支援を行っている。
 これまでの過去3年間で100例近くの重症心疾患胎児診断例の家族に寄り添い、思いを傾聴し、こどもの病状の理解の手助けや療養生活をイメージできるよう支援してきた。これまでの支援により、多くの家族の不安や葛藤が緩和され、家族がこどもの病気と向き合えるようになり、出生後の有意義な療養生活
に寄与できたと考えている。
しかし一方で、胎児診断時より治療を望まれない家族、出生直後に治療を望まれないことを表出された家族、出生後の療養生活の中で胎児診断、胎児治療や出生直後の手術そのものに疑問を表出する家族もおり、カウンセリングを重ね、家族間、家族と医療者間、あるいは医療者間の調整に難渋する経験をした。それらの経験から、先天性心疾患の胎児診断に対する家族支援においては、いくつかのピットホールがあることが見えてきた。1.家族背景:染色体異常、障害を抱えた家族の存在、2.祖父母の影響:出産や子どもの治療に強く反対する祖父母の存在、3.家族間・医療者間の認識の齟齬:胎児診断が確定診断ではないことや、疾患の生命予後と発達予後、治療選択に関する患者間、患者-医療者間、医療者間の認識の齟齬である。これらは、家族の意思決定に大きく影響した。
 本シンポジウムでは、先天性心疾患の胎児診断における家族支援のピットホールと対策について症例を提示しながら、皆様と考えていきたいと思います。