The 52st Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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シンポジウム

シンポジウム13(II-S13)
小児循環器領域の遺伝子医学の革新

Thu. Jul 7, 2016 3:00 PM - 4:30 PM 第B会場 (天空 センター)

座長:
山岸 敬幸(慶應義塾大学医学部 小児科)
横山 詩子(横浜市立大学医学部 循環制御医学)

II-S13-01~II-S13-05

3:00 PM - 4:30 PM

[II-S13-03] 心筋症の遺伝子解析に基づく原因と病態解明

上砂 光裕 (日本医科大学 小児科)

1990年、Seidmanらにより肥大型心筋症(HCM)の原因としてβミオシン重鎖遺伝子(MYH7)のミスセンス変異が報告されたのを端緒に、家系連鎖解析から、トロポニンT、αトロポミオシン、ミオシン結合蛋白C(MYBPC3)が、HCM原因遺伝子であることが報告された。さらに、他のサルコメア構成蛋白遺伝子(MYL2, MYL3, TNNI3, ACTC )も疾患原因遺伝子であることが示された。現在HCM患者の60%にサルコメア構成蛋白の遺伝子変異が同定される。サルコメア構成蛋白遺伝子以外ではZ帯構成蛋白遺伝子、カルシウムハンドリング蛋白等の報告があるが頻度はきわめて低い。
拡張型心筋症(DCM)ではβミオシン重鎖遺伝子(MYH7)、ラミン(LMNA)、タイチン(TTN)、転写制御因子Eya4(EYA4)等は家系を用いた連鎖解析法に基づき疾患原因遺伝子として同定された。しかしながら現在報告されている40種類の遺伝子の多くは候補遺伝子アプローチにより同定されたもので、頻度も低く、厳密には、pathogenic variantと言う表現が適当かもしれない。DCMでは30%に家族性が報告されているが、連鎖解析に足る大家系も少なく、遺伝子解析も十分とは言えない。
2005年の次世代シークエンサーの登場によって、遺伝子解析の方法も大きく変化し、現在では全ゲノムあるいは全エクソンをスクリーニング的に解析する方法も取られるようになった。心筋疾患領域においてもこの方法を用いての報告がみられるようになった。
心筋疾患の遺伝子解析の現状にふれつつ、同定された疾患原因遺伝子変異を基になされた、機能解析や病態の解明の一端について述べる。また、心筋症領域の遺伝子解析方法の進歩に伴う発展と課題について言及する。