第52回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

心筋心膜疾患

一般口演1-16(III-OR116)
心筋心膜疾患

2016年7月8日(金) 11:05 〜 11:55 第D会場 (オーロラ イースト)

座長:
中島 弘道(千葉県立こども病院 循環器内科)

III-OR116-01~III-OR116-05

11:05 〜 11:55

[III-OR116-01] 新しい「小児心電図の基準値」を用いた小児期肥大型心筋症の心電図抽出基準に関する検討

吉永 正夫1,2, 堀米 仁志2, 住友 直方2, 長嶋 正實2, 牛ノ濱 大也2, 田内 宣生2, 岩本 眞理2, 泉田 直己2, 阿部 勝己2, 緒方 裕光2, 高橋 秀人2 (1.鹿児島医療センター 小児科, 2.厚労省研究『小児期心筋症の心電図学的抽出基準、心臓超音波学的診断基準の作成と遺伝学的検査を反映した診療ガイドラインの作成に関する研究』班)

キーワード:肥大型心筋症、心電図、スクリーニング

【背景】小児における肥大型心筋症 (HCM) のECG、UCG上の抽出/診断基準は全世界的にない。中学で診断されるHCM患児のECG所見出現時期に関する成績も少ない。【目的】HCM抽出のための波高基準値を作成し、中1で初めて診断された患児の小1時のECGを検討すること。【方法】1. 基準値の作成;基礎疾患・不整脈・ST/T波異常を有する例を除外した小1男子8408名、女子8462名のECGを用いた。心検時のHCMの抽出頻度は数万人に1人と推測されており、5000人に1人の抽出基準を検討した。対象者の99.98パーセンタイル値および統計学的に片側で5000人に1人を抽出する値 (平均値 + 3.540 x 標準偏差)の両者を満たす値とした。肥大所見として、1) SV1+RV5, 2) SV1+RV6, 3) Cornell基準(RaVL+SV3), 4) Cornell product (Cornell基準x QRS幅)を用いた。今回新たに5) V2基準 (V2のR波とS波の加算値, RV2+SV2), 6) V3基準(RV3+SV3), 7) V4基準(RV4+SV4)も検討した。2. 患児;K病院でフォロー中の心検時診断例11例 (男児9例、女児2例)のうち、中1で初めて診断された9例(全例男児)の小1時のECGを入手し検討した。9例中1例が18歳で突然死し、1例は16歳時院外心停止を起こした。【成績】小1男児の抽出基準値は、1)≧6.1 mV, 2)≧5.3 mV, Cornell基準≧3.9 mV, Cornell Product≧3474 mm*ms, V2基準≧6.5 mV, V3基準≧5.6 mV, V4基準≧5.2 mVであった。各基準を満たした例数はV3基準 3例、Cornell基準、Cornell product、V2基準が各々1例であった。V3基準を満たした3例は突然死例、院外心停止例、および中1時心室壁厚が既に19mmあった1例であった。小1心電図の自動診断所見は[正常範囲内]、[境界域-異常]、[境界域-正常]であった。【結論】HCM抽出基準値の作成および心室中隔肥厚を反映すると考えられるV3基準の採用により、小児期HCM重症例の早期診断と早期介入が可能と考えられた。小1女子、中1、高1での基準値作成も必要と考えられた。