09:15 〜 10:05
[III-OR121-02] 右室流出路形成が肺動脈閉鎖兼正常心室中隔TCPC術後例に及ぼす影響
キーワード:肺動脈閉鎖兼正常心室中隔、TCPC、右室流出路形成術
【背景・目的】当院では、類洞交通のない肺動脈閉鎖兼正常心室中隔(PAIVS)に対し、右室減圧目的にBrock剪刃による右室流出路形成術(B術)を行っている。B術の肺動脈の発育やFontan循環に及ぼす影響を後方視的に検討した。【対象】1981年から2014年にTCPC(T)術に到達したPAIVS 61例を対象とした。初回手術で体肺短絡術に加えてB術を施行した例(B群)は14例で、B術の適応は肺動脈弁の膜様閉鎖例とした。Ebstein合併例2例、三尖弁閉鎖術を施行した2例を除外した。初回姑息術前、グレン(G)術前、T術前後の心臓カテーテル検査の結果から、B群の収縮期右室圧/左室圧比(RVp/LVp)、右室拡張末期容量対正常比率(RVEDV% of n)、また施行しなかった群(非B群)とのPA Index(PAI)(mm2/m2)、中心静脈圧(CVP)(mmHg)、左室拡張末期圧(LVEDP)(mmHg)、左室拡張末期容量対正常比率(LVEDV% of n)、左室駆出率(LVEF)(%)、心係数(CI)(L/min/m2)の比較を行った。【結果】B群は姑息術前のRVp/LVpが中央値1.59(01.10-2.34)(以下中央値で示す)、G術前は1.18(0.55-1.81)と右室減圧効果を認めた(p=0.01)。%RVEDV of nは姑息術前が33(10-69)、G術前が32(40-80)(ns)であり右室容量の有意な減少はなかった。内径4mmの体肺短絡術を行ったB群9例と非B群13例の比較では、G術前の%RVEDV of nはB群47(41-76) vs 非B群 16(6-40)でB群が小さかった(p<0.01)。PAIはT術前でB群271(197-572)vs非B群234(151-248)とB群が有意に高かった(p=0.03)。またT術後の比較では、CVPはB群8.8(7-10)vs非B群11(7-14)(p=0.04)、LVEDP はB群4(3-6)vs非B群 6(4-11)(p=0.01)と有意差を認めた。LVEDV% of n、LVEF、CIに差はなかった。【結論】B術により右室圧は有意に減少し、G術後はadditionalな血流として肺動脈の発育に寄与すると考える。またT術後の非B群でのLVEDP、CVPの上昇は類洞交通の影響が考えられ、右室容量の小さい例の適応は虚血を考慮し慎重な検討が必要である。