第52回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

術後遠隔期・合併症・発達3

一般口演1-21(III-OR121)
術後遠隔期・合併症・発達3

2016年7月8日(金) 09:15 〜 10:05 第E会場 (シンシア ノース)

座長:
小林 富男(群馬県立小児医療センター 循環器科)

III-OR121-01~III-OR121-05

09:15 〜 10:05

[III-OR121-04] 肝硬度測定によるFontan循環の検討

阪本 瞬介1, 夫津木 綾乃1, 小沼 武司1, 大橋 啓之2, 澤田 博文2, 三谷 義英2, 新保 秀人1 (1.三重大学医学部附属病院 胸部心臓血管外科, 2.三重大学医学部附属病院 小児科)

キーワード:Fontan循環、肝障害、術後遠隔期

【背景】Fontan循環は術後遠隔期に肝硬変等の肝障害を合併することが知られているが、肝障害の出現頻度や評価方法は明らかになっていない。【方法】FibroScan(Transient Elastography)はプローブから発生する単回の剪断波が肝を伝搬する速度を計測することで肝の弾性値を算出する機器で、主に肝硬変等の慢性肝疾患のフォローアップに利用されている。FibroScanを用いて得られる肝硬度(Liver Stiffness:LS [kPa])は、高いほど肝の線維化が進行していると解釈されるが、急性肝炎・黄疸・うっ血など肝線維化以外の要因でもLSは上昇する。今回2001年から2015年までにFontan手術を行った22例を対象に、FibroScanを用いてLSを測定した。疾患はTAが5例、HLHSが2例、その他の単心室症が15例。術式はTCPCが20例、fenestration TCPCが2例で、Fontan手術時年齢は2.3-4.8歳(平均3.0歳)、FibroScan検査時の術後年数は0.3-14.4年(平均6.8年)、FibroScan検査時年齢は4.3-17.9歳(平均10.0歳)であった。肝硬変(LC)や蛋白漏出性胃腸症(PLE)を合併する症例は認めなかった。【結果】LSは7.9-38.3kPa(平均19.3、中央値17.54)と高値を示した。LSと相関を認めた項目は、Fontan手術時年齢(r=-0.231)・心係数(平均3.8L/min/BSA、r=-0.483)・APRI(ASTとPltの比でLCの指標となる、平均0.50、r=0.265)であった。Fontan術後期間・CVP(平均10.5mmHg)・PAI(平均235)とLSに相関関係は認めなかった。【考察】健常児でのLSは中間値5.0kPa・正常上限値7kPaとされ、成人では7kPa以上を有意な肝線維化、12.5-15kPa以上をLCと解釈される。Fontan術後症例のLSは極めて高値であった。一方で今回検討した22例にLCやPLEを合併した症例はない。LSが心係数と中等度の相関を示したことから、LSはFontan循環の適合性を反映する可能性がある。Fontan循環における早期肝障害のスクリーニングに有用であるかは更なる検討を要する。