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[III-S08-01] Fibrous Skeltonを意識したPolytetrafluoroethylene Stripによる弁輪形成ー深いCoaptationとDurabilityの向上を目指してー
【背景】成人の僧帽弁形成術においては人工弁輪を用いてcoaptationを深めることが一般的で,リングの欠如が遠隔期のMR再発のリスクである.一方小児では人工弁輪の使用は難しく,成長も考慮しなくてはならない.弁輪形成はKey-Leadといった,弁輪をいわゆる”潰す”手技が一般的であったが,弁尖のcoaptaionを重視し,より生理的に弁尖を”活かした”形成術がdurabilityの向上につながると我々は考えた.【方法】心臓繊維骨格(cardiac fibrous skelton)を意識しtrigon方向への弁輪縫縮(前後径の短縮)を誘導し必要な弁尖のcoaptationを得ることがconceptである.Trigonもしくはそれに相当する部分を同定する.必要な弁尖の形成を行った後,病変側のtrigonから後尖弁輪へhorizontal mattressに数針運針する.次に水試験を行い運針した糸を前方へ(Trigonに向けて)けん引し,逆流が完全に制御されるのに必要な縫縮距離を計測する.目標とする短縮距離に0.6mmPTFE patchをstrip状にtrimmingしflexibleな人工弁輪として用いる.片側では前後径の短縮が不十分な場合,もしくは左右対象な病変の場合,対側にも同様の手技を行う.弁輪固定していない後尖と前尖弁輪はintactであり,成長とdurabilityの両立を目指している.ハイビジョン画質の手術動画を供覧する.【結果】6例に同手技を応用した.年齢,体重は中央値で4歳 (2-8歳),13.6kg (10.0-16.3kg).左側房室弁の主病変は,前尖のcleftとprolapse,P2,3の低形成,高度輪拡大,AVSD根治後の再発MR,TCPC後房室弁逆流(機能的単心室症).平均8.8±7.0か月の術後観察期間で全例mild以下に逆流は制御されていた.【結論】しばしば不足する弁尖組織の中で生理的なgeometryを維持しつつ,同部の有効なcoaptationを得ることができた.左側房室弁形成術において共通房室弁も含め様々な解剖学的状況に応用できる可能性があるが,遠隔成績による有効性の証明が必要である.