第52回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム9(III-S09)
周術期から遠隔期に渡る手術による精神・神経発達の評価

2016年7月8日(金) 10:20 〜 11:50 第B会場 (天空 センター)

座長:
市田 蕗子(富山大学医学部 小児科)
小山 耕太郎(岩手医科大学医学部 小児科学講座)

III-S09-01~III-S09-06

10:20 〜 11:50

[III-S09-04] Fontan循環における脳循環評価

栗嶋 クララ, 桑田 聖子, 簗 明子, 岩本 洋一, 石戸 博隆, 増谷 聡, 先崎 秀明 (埼玉医科大学総合医療センター 小児循環器部門)

【背景】Fontan術後患者では,高次機能障害を認めることが少なくない.その原因として,生後すぐの手術の他,少ない体血流と高い中心静脈による循環鬱滞が各臓器へ影響し,脳循環にも異常も来たしている可能性がある.
【目的】Fontan循環における脳循環を評価する.
【方法】対象はFontan術後(Fontan群)43名,対照群としてFallot四徴症術後(TOF群)24名と比較した.MRI検査で総頚動脈,上大静脈(SVC),下大静脈(IVC)血流,心係数(CI)を測定し,心臓カテーテル検査データから酸素消費量および上半身と下半身の酸素需要供給バランスの比oxygenation balance index(OBI)を算出した.
【結果】Fontan群,TOF群は共に,総頚動脈およびSVC血流は,CIと有意な正の相関関係を認め(Fontan群各々r=0.89, 0.93,P<0.00001,TOF群各々r=0.95,0.78,P<0.001),低心拍出は脳循環にも直接的に影響を与えることが示唆された.一方,CIとSVC血流/IVC血流はTOF群では一定に保たれているのに対し,Fontan群では正の相関関係を認め,Fontan群では低心拍出時に脳血流の維持が困難である可能性が示された.OBIはFontan群で1.1±0.4と1前後に保たれていたが,OBI<1の症例は,総頚動脈およびSVC血流は低下している症例であった.Fontan群の上半身の酸素消費量は,SVC血流と正の相関関係を認めた(P<0.001).上半身の酸素消費量=(上行大動脈血酸素含有量-SVC血酸素含有量)×上半身血流で表され,上半身血流減少時にはδSatO2が増大することから,Fontan群での酸素消費量の減少幅は血流減少の変化よりも少なく、バランスを維持できていないことが示された.
【考察】Fontan群では,脳への血流分配が低下した状態では,脳酸素消費量を抑える方向に働くものの,代償するには至らず,酸素需要供給バランスを維持することが困難な可能性がある.