17:30 〜 18:30
[MIS01-01] iPS細胞を用いた肺動脈性肺高血圧症の研究 ~現状と課題そして将来への展望~
肺動脈性肺高血圧症(PAH)は、近年様々な治療薬が利用可能であるが、依然5年生存率70%の難治性疾患である。PAH患者では肺小動脈において、中膜肥厚や内膜増殖に伴う内腔の狭小化が観察されるが、この病態には、血管内皮細胞の機能異常とそれに伴う血管平滑筋細胞の異常増殖が関与しており、一部の患者ではいくつかの遺伝子変異が指摘されているものの、肺血管特異的に内皮/平滑筋細胞の機能異常を引き起こすメカニズムについて未だ詳細は不明である。そこで近年、疾患特異的iPS細胞を用いた病態研究の進展が期待されている。
しかし、これまでにもPAH患者由来iPS細胞を用いたin vitroでの病態解明は試みられてきたが、現段階ではまだいくつかの大きな問題がある。その一つとして、肺血管細胞の特異的マーカーが存在しないことが挙げられる。すなわち、iPS細胞を血管内皮/平滑筋細胞へ分化誘導することは可能であるが、現状では混在する体血管と肺血管細胞を区別することができないため、真の結果がマスクされている可能性がある。現在我々は、微量RNAを用いた網羅的発現プロファイリングによる肺血管細胞特異的マーカーの探索を行っており、それについて紹介したい。
一方、先天性心疾患を伴うダウン症候群患者において肺血管病変の進行が早いことは、よく知られているが、その原因も未だ詳細は不明である。我々は、ダウン症候群患者由来iPS細胞を確立しており、肺血管特異的ではないものの、血管内皮/平滑筋細胞に分化誘導することで、21トリソミーを持つ血管細胞の生理学的な機能特性の解析を試みており、それについても概説したい。
今後もし、有用な肺血管細胞マーカーが同定できれば、iPS細胞から患者特異的肺動脈内皮/平滑筋細胞を単離・培養することが可能となり、PAHの病態解明や創薬に役立つだけではなく、既存の肺高血圧症治療薬に対する細胞反応性をin vitroで確認することで、患者一人ひとりに合わせたテーラーメード医療の発展も期待できる。
しかし、これまでにもPAH患者由来iPS細胞を用いたin vitroでの病態解明は試みられてきたが、現段階ではまだいくつかの大きな問題がある。その一つとして、肺血管細胞の特異的マーカーが存在しないことが挙げられる。すなわち、iPS細胞を血管内皮/平滑筋細胞へ分化誘導することは可能であるが、現状では混在する体血管と肺血管細胞を区別することができないため、真の結果がマスクされている可能性がある。現在我々は、微量RNAを用いた網羅的発現プロファイリングによる肺血管細胞特異的マーカーの探索を行っており、それについて紹介したい。
一方、先天性心疾患を伴うダウン症候群患者において肺血管病変の進行が早いことは、よく知られているが、その原因も未だ詳細は不明である。我々は、ダウン症候群患者由来iPS細胞を確立しており、肺血管特異的ではないものの、血管内皮/平滑筋細胞に分化誘導することで、21トリソミーを持つ血管細胞の生理学的な機能特性の解析を試みており、それについても概説したい。
今後もし、有用な肺血管細胞マーカーが同定できれば、iPS細胞から患者特異的肺動脈内皮/平滑筋細胞を単離・培養することが可能となり、PAHの病態解明や創薬に役立つだけではなく、既存の肺高血圧症治療薬に対する細胞反応性をin vitroで確認することで、患者一人ひとりに合わせたテーラーメード医療の発展も期待できる。