第52回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスターセッション

染色体異常・遺伝子異常1

ポスターセッション(P03)
染色体異常・遺伝子異常1

2016年7月6日(水) 18:00 〜 19:00 ポスター会場 (天空 ノース)

座長:
糸井 利幸(京都府立医科大学 小児循環器・腎臓科 )

P03-01~P03-05

18:00 〜 19:00

[P03-03] 幼児期に著明な大動脈弁輪拡張症を来したMarfan症候群の一例

小川 陽介1, 中野 克俊1, 進藤 考洋1, 犬塚 亮1, 笠神 崇平1, 平田 陽一郎1, 清水 信隆1, 藤田 大司2, 武田 憲文2, 谷口 優樹3, 岡 明1 (1.東京大学医学部附属病院 小児科, 2.東京大学医学部附属病院 循環器内科, 3.東京大学医学部附属病院 整形外科)

キーワード:Marfan症候群、大動脈弁輪拡張症、FBN1遺伝子

【はじめに】Marfan症候群には重症かつ早期に発症する一群があり、それらの群ではFBN1遺伝子の24-32番目のエクソンに変異を有することが多いとされているが、それらの症例の管理・治療について明確なコンセンサスは得られていない。【症例】4歳6か月男児。新生児期にクモ状指に気づかれ、心エコーで大動脈弁輪拡張症、僧帽弁逸脱症を指摘されたため、Marfan症侯群が疑われていた。2歳10か月時に大動脈弁上部の拡張を認め、前医でcarvedilolおよびlosartan内服を開始された。4歳3か月時に肺炎を契機に心機能低下・大動脈弁逆流の増悪を認め、当科マルファン外来に紹介された。早期の外科的介入が必要と考えられ、4歳7か月時にDavid手術を施行された。術後も心機能低下が遷延したが、carvedilolによる心不全治療を強化したうえで退院した。本症例の遺伝子検査ではFBN1遺伝子のスプライシング変異(IVS29+1G>A)を認め、家族性はなくde novoの変異と考えられた。【考察】Marfan症侯群は幅広い表現型を有する。とくにFBN1遺伝子の24-32番目のエクソンに変異を有する場合は新生児期から多臓器に発症し、重症な転帰を辿る症例が多いことが報告されている。本症例も同領域にスプライシング変異を持ち、過去に同じ変異が一例報告されているが、既報例は1歳10か月で死亡しており、同じ変異であっても表現型に差異が認められた。本症例はDavid手術により大動脈弁逆流は改善したものの、心機能低下が遷延したため長期の入院管理を要した。周術期の冠動脈の虚血が懸念されたが、心筋虚血の所見はなく、長期にわたって大動脈弁逆流が存在していたことが不可逆的な心機能低下の誘因と考えられた。重症な転帰が予想される症例については綿密なフォローアップを必要とし、早期から外科的介入を含めた積極的治療を検討する必要がある。