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[P55-04] 術後残存肺高血圧及び肺循環障害に対するタダラフィル注腸の急性効果と薬物動態
キーワード:タダラフィル、術後肺高血圧、注腸投与
【背景】先天性心疾患の周術期において左右短絡先天性心疾患に対する根治術後の残存肺高血圧(PH)や単心室形態における術後肺循環障害(PI)が問題になることがある。【目的】術後PH、PIに対するタダラフィル注腸の効果と薬物動態を調査する。【方法】タダラフィル0.5mg/kgを12時間毎に注腸投与。PHは平均肺動脈圧(mPAP)が25mmHg以上、PIはmPAP(上大静脈で測定)が15mmHg以上、もしくはtranspulmonary pressure gradient(TPG)が10mmHg以上とした。タダラフィル血中濃度を測定(前、後2、4、6、8、12、16、20、24時間)。体血圧、肺動脈圧を観血的にモニタリング。【結果】2心室形態(BV):AP window1例、cAVSD1例(trisomy21)、単心室形態(SV):PAIVS1例、TA(Ic)1例、SRV1例の計5例。月齢は0.7~12.7か月(中央値8.2か月)。体重:3.0~8.0kg(中央値5.3kg)。BVでは根治術、SVでは両方向性グレン手術を施行。投与前後で、BVでは、mPAPが51→35、26→18mmHg、Pp/Psが0.81→0.6、0.35→0.31と低下した。SVでは、mPAPが17→6、16→10、15→9mmHg、TPGが10→5、9→7mmHg、7→6mmHgと低下した。mPAP・TPGの投与前からの変化率を比較していくと投与8時間後から有意に低下していた(-23.3+/-8.0%、p=0.03)。体血圧に有意な変化はなかった。血中濃度は初回、2回目投与ともに次回の投与時まで血中濃度が緩やかに上昇し続け、12時間後:48.0+/-9.2ng/ml、24時間後:144.2+/-35.4ng/mlであった。全例でフェンタニルが術直後から投与されていた。【考察】特徴的な薬物動態は術直後の低心拍出量やフェンタニル投与などによる吸収障害、代謝障害が原因と考えられた。血中濃度は過去の報告と比較して低値であり、本研究においては血行動態的な効果を認めたもののloading doseの設定や、頻回投与などさらなる効果を発揮するための工夫が必要である。【結論】術後PH・PIに対してタダラフィル注腸は有効である。