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[P81-03] 大動脈弓離断症に対する大動脈再建術の工夫 ~下行大動脈広範囲剥離による無理のない吻合~
キーワード:大動脈弓離断症、大動脈再建術、側開胸
【はじめに】大動脈弓離断症(IAA)に対する大動脈再建術においては、上行大動脈と下行大動脈の距離が遠く、正中からの下行大動脈剥離では不十分で緊張の強い吻合を余儀なくされることがあり、大動脈狭窄の残存や左気管支狭窄の原因となる可能性がある。最近我々の施設では、側開胸による下行大動脈の全長に渡る剥離授動を行った上で、正中切開からの大動脈再建を行うことで、無理のない吻合を行うようにしている。今回、この術式の効果について検討した。【術式】まず右側臥位にて左後側方切開で第5肋間を開胸。下行大動脈を全長にわたり剥離授動する。肋間動脈は頭側の1対を除いて基本的に温存する。横隔膜直上の大動脈にタバコ縫合をかけて心嚢内に挿入しておく。動脈管に結紮糸をかけておく。ここまで行ったら閉胸し体位変換して胸骨正中切開。腕頭動脈に送血用グラフトを縫着し体外循環を開始。下行大動脈のタバコ縫合の糸を引っ張り出し下行大動脈送血管を挿入。上下半身分離送血、大動脈遮断下に動脈管組織を切除した下行大動脈を上行大動脈に端側吻合。その後心内修復を行う。【結果】2013年から2016年にかけて5例のIAAに対してこの方法で大動脈再建を行った。IAAタイプはAが2例Bが3例、心内奇形はVSD3例DORV1例APwindow+VSD1例であった。全例両側肺動脈絞扼術を先行させた。手術時平均月齢2.6ヶ月、平均体重4134gであった。術前CTによる上行大動脈下行大動脈間距離は平均19.0mm(16.6~23.5mm)であったが、全例問題なく緊張のない吻合を行うことができた。術後の吻合部圧較差は平均4.0mmHg(0~13mmHg)であり再インターベンションなし。左気管支狭窄なし。手術死亡および遠隔死亡なし。【考察】IAAの大動脈再建を無理なく行う方法として側開胸による下行大動脈全長剥離授動は有効であった。下行大動脈送血を容易にするというメリットもあった。