第52回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

要望演題

MAPCA

要望演題9(YB09)
MAPCA

2016年7月8日(金) 09:35 〜 10:25 第C会場 (オーロラ ウェスト)

座長:
猪飼 秋夫(岩手医科大学附属循環器医療センター 心臓血管外科)

YB09-01~YB09-05

09:35 〜 10:25

[YB09-02] 肺動脈の成長に及ぼすメルボルン・シャントの効果

大中臣 康子, 麻生 俊英, 武田 裕子, 佐々木 孝, 小林 真理子 (神奈川県立こども医療センター 心臓血管外科)

キーワード:Melbourne shunt、tiny pulmonary artery、pulmonary atresia

【背景】主要体肺側副血行(MAPCAs)を合併した肺動脈閉鎖症で極めて細い中心肺動脈が存在するとき(tiny true central PA)、その中心肺動脈を上行大動脈に端側吻合し肺動脈の成長を期待する体肺動脈短絡術式(Melbourne shunt)がある。この術式の効果を検討した。【方法】過去11年間に当センターでMelbourne shuntを施行した7例について、後方視的に検討した。【結果】男児5例、女児2例で、手術時年齢は中央値3.5か月(2-14か月)、体重は中央値4.7kg(3.8-7.9kg)、アプローチは正中切開が3例、側開胸が4例であった。5.5±4.5年の観察期間中、手術死亡および遠隔死亡はなかった。7例のうち5例が二心室で2例がRastelli手術に、2例が単心室症でその1例がFontan手術に到達した。その他の姑息手術を4回、カテーテル治療を3回が行った。術後評価カテーテル検査を行った5例を対象に、肺動脈の成長について、Melbourne shunt前後30±33か月の間の変化を比較すると、右肺動脈径は2.8±0.6mmから6.2±2.2mmへ(p=0.010)、左肺動脈径は2.9±1.0mm から9.2±3.5mm(p=0.007)と太くなりPA indexは53±31から252±182へ有意に成長していた(p=0.035)。一方、術後の左右肺動脈の成長は左肺動脈の方がよかった(p=0.014)。【考察】Melbourne shuntは人工血管を用いた体肺動脈シャントと異なり術直後の高肺血流を心配する必要はなく、また細い肺動脈であるが自己組織であり開存性はよく、一方、体の成長に合わせてシャント流量も増加し中心肺動脈も成長していた。左右の肺動脈の成長に差が見られたが上行大動脈の側方に吻合することからその対側の肺動脈(多くは右肺動脈)が拡大した上行大動脈に圧迫されたことによる左右肺動脈の血流不均等によると推測される。しかし、細い側の肺動脈でも確実に成長しておりPA indexも十分なサイズになっていた。【結論】Melbourne shuntはtiny central PAを成長させる確実で効果的な方法である。