第53回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

パネルディスカッション

パネルディスカッション 1 (I-PD1)
成人先天性心疾患

2017年7月7日(金) 16:00 〜 17:45 第1会場 (1F 展示イベントホール Room 1)

座長:鎌田 政博(広島市立広島市民病院循環器小児科)
座長:河田 政明(自治医科大学 とちぎ子ども医療センター心臓血管外科)

16:00 〜 17:45

[I-PD1-04] フォンタン手術後のタンパク漏出性胃腸症に対する外科治療戦略

笠原 真悟1, 栗田 佳彦2, 黒子 洋介1, 小谷 恭弘1, 新井 禎彦1, 大月 審一2 (1.岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 心臓血管外科, 2.岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 小児循環器科)

キーワード:フォンタン手術, タンパク漏出性胃腸症, 外科治療

(はじめに)段階的な治療戦略がフォンタン手術の到達率の向上をもたらしたとともに、すべての最終目標がフォンタン手術と拡大解釈され、長期成績においても多くの問題を抱えるに至った。術後のタンパク漏出性胃腸症(PLE)の報告されている5年生存率は 46~88%であり、確立された治療法は現在も確立されていない。当院では第一に血行動態的な改善を目指し治療可能な病変に対しては積極的に介入を行ってきた。この合併症に対する外科的なアプローチにつき考察した。(対象)1991年~ 2014年に岡山大学でフォンタン手術401例中23例(5.7%)を対象とした。血清アルブミン値≦3.5g/dl、また便中α-1アンチトリプシンクリアランス上昇(≧20ml/35 day)を満たすか、腸管蛋白漏出シンチグラフィ陽性所見をもってPLE罹患状態と定義した。これらの症例に対し、薬物療法を先行した後、15例(65%)に外科治療を行った。(結果)PLE診断後の観察期間は中央値4.7年で生存率は5年で68%、10年54%であった。治療に反応し、寛解15例、部分寛解4例、寛解なし4例であった。PLE発症の有意な危険因子としては1.主心室が右室、2.高い中心静脈圧(11.8:16.3mmHg)、3.高い肺動脈圧(11.2:15.7mmHg)、4.低い心拍出量(3.5:2.9l/min/m2)であった。外科治療は15例(65%)に行い、fenestration作成14例、TCPC conversion4例、房室弁形成2例、狭窄解除術3例などであった。fenestration作成単独例は2例であった。外科手術後の効果として平均中心静脈圧は16mmHgから13mmHgに低下(P<0.05)した。また、外科治療の時期であるが、PLE診断後6ヶ月以内に外科手術を行ったものは生存率が100%であったのに対し、6ヶ月以上経過して行った症例は24%と明らかな差を認めた。(結語)難治性合併症であるPLEの治療成績を示した。結構動態的改善を目指した外科治療においてはPLE診断後早期(6ヶ月以内)の介入が生命予後を改善する可能性を示した。